二話

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 清々しい笑みで言い放たれ、シェドは目を見開かせた。意表を付けた喜びに浸りつつ、アザレアは笑顔のままつらつらと毒を吐き続ける。 「いつも真顔でぶっきらぼうだし、反応も薄すぎ。大きいのは図体だけで性根は頑固な子供だし、散々迫られて拒否するとかいっそ失礼でしょう。大体あんな雑な抱え方、雰囲気台無し。バカなの、鈍感なの?」  ああそれとも、と一旦区切り、アザレアは憐れむような眼差しで視線を下へ動かした。 「不能なの?」 「違う」  そこは男のプライドにでも関わるのか、すぐ否定された。好意的な化けの皮を捨て去った罵倒に、シェドは眉を顰めて感想をこぼす。 「お前……かなり容赦ない物言いだな」 「あら、こちらの方が正直で好みでしょう?」  アザレアはふんと鼻を鳴らして見上げる。大人がねだるようなものではなく、少女が胸を張ってみせるようなそれで。 「そうだな。気味の悪い笑顔よりマシだ」 「言ってくれるじゃない、鈍感男のくせに」  ストレートに示さないと伝わらない男に、笑顔の品評ができるのは意外であった。アザレアとしても、この男の前で猫を被るのは疲れてきたので、こちらの方が高評価なのは願ったりかなったりだ。 「アザレア」  突然呼ばれ、なによと返す。行為の誘いだとは、とても思えなかった。ぐるぐる巻きにされた時点で、艶やかな雰囲気は削がれていたので。 「服は、洗って返してくれ」  シャツだけの上着で少し寒そうな彼は、服を剥ぐでもなくそう言った。  上着だけのまま彼が部屋から去り、アザレアはよろよろと立ち上がる。途端、巻かれていた服がばさりと落ちた。ゆっくりと、黒い布地を拾い上げる。  汚れている、と思った。  信者と巫女の体液が混ざり染みついたそれには、服の持ち主の体温がまだ僅かにこびりついていた。
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