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アザレアが礼拝を終えて通路を歩いていると、少女が話しかけてきた。同じ絹の礼服を纏っている少女は、瞳を輝かせアザレアを見つめる。
「今日の礼拝も、とても素敵でした! わたくし、つい聞きほれてしまいましたわ!」
「あら、ちゃんと聖書の内容も耳に入れなくてはダメよ?」
アザレアは若い少女をそっとたしなめる。咎めながらも柔らかな物言いに、少女の頬が赤く染まった。
「お若い巫女長は、盲目な見習いを従えるのがお好きなのかしら」
嫌味の混じった物言いに、視線がそこへ集中する。同じく絹を纏った妙齢の女性が、緩くウェーブのかかった金髪をかき上げ、少女を睨みつけていた。
「小賢しさと身体でのし上がっただけあるわね」
「何か御用かしら、ミューゼ副巫女長様?」
縮こまった見習いを庇うように、アザレアは前に出る。一切怯まない態度に、気にくわないとばかりにミューゼはふんと鼻を鳴らした。嫌味の混ざった行動だろうと、白粉が塗られた表情は美しく、艶やかさを保ったままだ。
「貴方にご執心のイースト様が、おいでになっていてよ」
その言葉を聞き、アザレアは見習いに微笑を贈ってから踵を返す。すれ違いざま、強めの香水の匂いが鼻孔を掠めた。
「貴族の方を待たせるなんて、随分と偉くなったものね」
嫌味にも顔色一つ変えず、アザレアは数歩歩いてからゆっくりと振り返った。
ああそうそう、と言い忘れていたとばかりに付け加える。
「『小間使い』有難う」
憎々しげな視線など意にも介さず、アザレアは涼やかな顔で正面へ向き直った。
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