初恋の月の裏側

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 余裕は無かった。縁側の床に二人分の衣類をかき集め、その上に横たえる。既に潤んで柔らかな後孔に俺の性器を当てる。プツリと押し入った。 「あ」    真面目なお前が色々準備したけれど、それでも狭くきつい内壁をゆっくりと割っていく。片手で自重を支え、片手で限界まで兆す陰茎をくちゅりと扱きながら、覆いかぶさる。舌を喰むように啜り、首筋を甘く噛む。胸の尖りを唇で挟み、転がす。十年分を味わうように。  顔を隠そうとする腕。 「顔、見せて。声、聞かせて。都心だけど庭広くて、他には届かないから」  都会の月夜はほんのり明るい。いつも隣に見ていた笑顔が、俺の真下で蕩けている。 「あ、あっ、ん……きもち、ぃっ」  一際嬌声の上がったところ狙って、そこだけを優しく執拗に突き上げる。十年分を与えるように。 「お前に恋してる……初恋なんだ。受けとめて」 「……あっう……っあ」  俺の形に緩んできた孔がキュウキュウ締まる。堪えきれず胎の内に精を吐き、お前は月下に白濁を放った。  いつの間にか鈴虫の音は止んでいた。鍛えられた下腹を撫でる。まだ中に繋がったままの俺がいる。 「君と見る月は綺麗ですね」 「死んでも……良くはないよね。長生きして、ここで一生一緒に眺めよう」 【終】
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