3 王子の複雑な生い立ち

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『それならば、母猫と子猫の両方をおまえに与えよう。今日からおまえが世話をするがいい。部屋で飼えばいい』 『いけませんわ。他の者達に迷惑がかかりますもの』 『ならば、おまえと猫の部屋を作ってやる』  それまでは大部屋で暮らしていたというのに、即座に、個室が用意された。王は他の女には目もくれずに、物静かだが芯の強いフェデルたけを愛するようになる。  そして、知り合った一年後にレイ王子が生まれた。しかし、その半年後、王の従姉にあたる王妃が正妻となった月にフェデルは原因不明の病で死んでしまう。  享年二十歳。最愛のフェデルを失った王は嗚咽を漏らし狂ったように叫んだ。 『なぜ、余を残して先に死んでしまったのだーーー』  その哀しみを振り払おうと、手当たり次第に女奴隷に手を出すようになるのだが、王の子を宿した者が病魔に侵されて亡くなるという事件が続くのだ。  継母の王妃に冷遇されながら、ケイ王子が生き延びたのは奇跡なのかもしれない。  一説によると、レイ王子を守るように王が宦官に言い聞かせていたという。  まぁ、別に、レイ王子が、どんな相手と付き合おうとも自分には関係ない。彼は王子様で自分は新入りの書記なので、そうそう会う機会もないだろうと思っていたのだが……。  運命の糸は思いがけないタイミングで絡まり、二人を思いかけない方向へと誘っていたようである。
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