ふたり

2/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 ひと通りの段取りを終えて、ベッドへ潜り込んだ。その後、ルカが帰宅した物音に目を覚ましたボクは、ズルズルとベッドから抜け出して、玄関へ向かった。 「んぉかえりぃ……」 「ただいま、どうしたの?今日は早起きだね」 「うん……あのね、謝るなら早い方がいいと思って起きたの」 「と、仰いますのは?」 「ごめんなさい……本日、あなたの美味しいプリンは、ご用意されま、せん……でし、た……」 「え、薄々忘れてるんだろうなぁとは思いつつ、大人しく一週間以上待っていたのに、そんなまさか……」 「本当に申し訳ございません。この度のお詫びに次ぐお詫びとして後日、美味しいお食事をご用意させていただきます」 「それ、信じていいんだよね?」 「あ……えっと、信じてほしい、としか言えないけど……前に話したボクの友人のいるビストロのお店、久しぶりに行ってみない?」 「ふむ、大変結構なご提案だと存じますが、一任してもよろしいのですか?」 「何卒、ワタクシめにどうか汚名返上の機会を賜りたく…… 」 「うむ、苦しゅうない。次は無いから、ゆめゆめ忘れないでね☆」 「うわぁ~満面の笑みが怖い!」  それからの日々は、諸々の段取りに奔走している内に、瞬く間に過ぎていった。そして今日、晴れて当日を迎えられた。お店とは何度も打ち合わせをして、首尾はバッチリ、だと思う。あとはただ美味しいごはんを食べるだけ。もう何も怖くない……はず。  予めルカに伝えていた通り、ボクは職場から直接会場へ向かうことにした。一緒に行く事もできたけど、うっかりネタバレしないための予防線を張った。仕掛ける前に勘付かれたら、これまでの苦労が水の泡だし、どうせならアイツのキョトンとした顔が見たい。  目的地への道沿いにあるお店を冷やかしながら、予約時間の少し前に着いた。ここは凝った装飾の外観が特徴的で、店内もアンティーク調の内装や調度品が、特別感を演出している。うっすら琥珀色に輝くガラス越しに様子を伺うと、既に本日のゲストが到着していた。  本人の姿を目にした途端、全身に緊張が走る。自分に大丈夫だと言い聞かせるように、目を閉じてゆっくり深呼吸をする。さぁ、開けてビックリな宴を始めるよ!
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!