灰に叫んで花を焚く

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「子供を持つことが、人生の大きな目的だって人は、それでいいみたいだった。結果的には生んでよかったって人もたくさんいた。でもそれが、未成年の母親の何パーセントかは分からないし、たとえ九十九パーセントだとしても……」  弓川が嘆息する。 「沙也加ちゃんがそうだとは限らないな」 「沙也加だって、今のタイミングで妊娠を望んでたわけじゃないはずだ。そこなんだよ。作りたくて作ったなら分かる。でも、後付けで正当化しなきゃならないような、アクーー」  アクシデント、と言いかけて、危ういところでやめた。 「――ええ、とにかく、現段階では望まなかった妊娠なわけだよ。おれと沙也加は大学に行くつもりだったし、その後働くつもりだった。結婚や出産はさらにその後。そんな人生設計を大きく変えた後に、やっぱりこんなはずじゃなかったって思う日が来ると思ったら、やっぱりさ」 「……喜ばしくない人生を送ることになった母親の例も、多く見たわけだな」  おれはうなずいた。  子供が生まれる。それは、個人にとっても、家族にとっても、さらには国家にとってだってうれしいことのはずなのだ。  それがなぜ、多様に積み重なる悲劇の引き金になってしまうことがあるのだろう。  沙也加はなぜ、そんな覚悟を決める気になったのだろう。 「沙也加ちゃんには、お前なりに向き合ってやれよ」 「そうだな。元カレと元カノとしてな。おれのことは大っ嫌いらしいし」  弓川が呆れたように、軽くのけぞる。 「お前、まだそんなこと……」 「他人だからできることだって、あるっていうだろ」  すねてみせるおれに、弓川がさらに呆れて、両手のひらを上に向けた。
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