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鳥と鳥
鳥はもう人間に二度と会うことがないよう深い深い未開の森で暮らすことにした。
自ら労すれば水と食べ物を得ることは出来たが、それは鳥が今まで経験したことのない労苦だった。
食べ物が獲れない日もあった。
激しい空腹のさ中、鳥は人間さえ自分を裏切らなければこんな辛い暮らしをすることもなかったのに、と人間を恨んだ。
空腹が満たされると鳥は寂しさを覚えた
。
自分を可愛がってくれた人間との思い出はこの未開の森でとって変わるものはなかった。
鳥は人間に裏切られた怒りと寂しさが同時に入り雑じった。
愛されたい。
可愛がられたい。
空腹になり、食べ物を求めて必死になれば忘れるが、腹が満たされると人間との幸せな暮らしを思い出しては鳥は苦しむのだった。
鳥は幸せだった人間との暮らしを懐かんでは怒り、寂しがっては恨み、それを反芻して苦悩している間に自分より大きな鳥に食われて死んだ。
鳥は死ぬまで死を知らなかったのである。
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