初恋

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初恋

 10年前  その日は快晴でキャンプ日和だった。  「美亜、晴れて良かったね」っと嬉しそうに、まゆみが言う。    中学生になって初めて出来た友達、日野まゆみの家族と、私の家族で、今日はオープンして間もない蛍の見えるキャンプ場に来た。  「うん。本当に良い天気だね、まゆみ」っと私も嬉しそうに返す。  「おーい、美亜、テント張るの手伝ってくれ。」っとお父さんが呼ぶ。  「はい、はい、じゃあ、まゆみ後でね。」っと言い、お父さんの元に駆け寄る。  私は、お父さんと夜、蛍を見る為のテント張りを手伝いして、お母さんはまゆみのお母さんとバーベキューの準備をしていた。  それから、私は、まゆみとその弟とで川で遊んだりしながら、楽しい時間を過ごした。  そして、お昼になり、みんなとバーベキューをしながら、美味しいお肉を食べたり、お父さん達はお酒を飲んだりして、お腹いっぱいお昼を満喫した。  「ねぇ、美亜、食後の散歩に向こうの山の方散策しない?」っとまゆみが言う。  「えっ?危なくない?」っと私が言うと、  「大丈夫だよ、そんなに険しい山じゃないし、登山道になってるから歩きやすいみたいだから、行こうよ。」っと私の手を引っ張り言う、  私は、少し不安になり、家族が居る方を見ると、お父さん達は、酔っぱらってテントで寝てるし、お母さん達は楽しそうにお喋りして、まゆみの弟は、テントでお昼寝中  「ねぇ、美亜、暗くなるまでに帰れば大丈夫だよ、行こうよ。」っとまゆみが言うので、  「うん。」っと頷くと、  「よし、決まり、お母さん、美亜と、その辺散歩してくるね」っとまゆみがお母さんに大声で言うと、  「まゆみ、美亜ちゃん、暗くなる前に帰って来るのよ。」っとまゆみのお母さんが言う。  「はーい、美亜行こう」っと言い、山の方へと歩いて行く。  「うん。」っと私は渋々まゆみの後ろから歩き始める。  まゆみは私と違い積極的な性格の活発で明るい、正反対ながら、何故か気が合って、友達になった、きっと、私に無い物に惹かれたんだろうなっと思い歩いてると、  「ちょっと、まゆみ、足早いよ。」っと私が言うと、  「えっ?そう、美亜が遅いんじゃない?」っと振り返り私に言う。  「もう少し、ゆっくり歩こうよ。」っとまゆみの側に近寄る。  「もう、しょうがないな。」っと言い私と一緒に歩く。  「ねぇ、まゆみ、緑綺麗だね。」っと周りを見て私が言うと、  「そうだね、下には小川が流れて、なんか気持ち良いね、何処までも歩いて行けそうだよ」っとまゆみが言いながら、どんどん歩いて行く。  「うん。なんか、本当に気持ち良いね」っと周りを見ながら歩いてると、  「あれ?まゆみ?」っといつの間にか側に居たはずのまゆみが居ない。  「えっ、うそ、まゆみ何処?」っと慌てて前を歩くが見当たらない。  「ちょっと、まゆみ何処よ。」っと歩きながら言うが返事が無い。  「しょうがないな。戻るか。」っと言い私は後ろを向き  「まゆみ、私戻るからね」っと一言言い、私は来た道を引き換えそうと歩き始める。  「まったく、まゆみったら友達を置いて行くってどうゆう考えよ。」っとぶつくさ文句を言いながら、歩いてると、私は道の端に足を滑らせて、下へと転がり落ちた。  (やだ、嘘でしょ、嫌こんな所で死にたくない)っと思いながら、何度か回転しながら下へ下へと落ちていった。  (なんか、暖かい天国かな?)っと思い、目を覚ますと、知らない髪の長い男の人が私の隣に居た。  「あなたは誰?」私はしぼり出すような声で聞く、その人は笑顔で微笑む。  「ここ、何処?」っと辺りを見回すと暗くて何も見えなかった。  動こうとするが、体のあっちこっちが痛くて動けず、足も痛くて歩けそうにないけど、  「私、生きてる?」っと呟くように言うと、その人は、笑顔で頷く。  私はしばらく、その人の隣に居て、何も喋らなくても、なんか温かく安心出来て、こんな気持ち初めてで、ずっとこのままでも良いと思っていた、そして、何より、その人の笑顔が素敵でずっと見ていたかった。  そんな夢心地の中、遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。  「美亜。」  「美亜ちゃん。何処に居るの?」  その声に私は、  「ここだよ。」っと出せる声を出した。  「声が聞こえたぞ、下だ。」っと誰かが叫び、  (私は、助かった?)っと思い、気を失った。  気がつくと、病院のベットに居て、心配そうに私を見る、両親の姿と、  「美亜、ごめんね、ごめんね、」っと泣きながら謝る、まゆみの姿があった。  両親の話によると、まゆみが山から戻り、私が居ない事に気づき、周辺を探したが見つからず、地元の消防団に頼み、山を中心に探していたが見つからず、夜になり、捜索を諦めかけた頃に、山の下の小川の近くで、無数の光が集まってる事に団員の1人が気づき、声を掛けたらしい、そして、そこに近づくと蛍がまるで私を守るように集まっていて、そこには、蛍以外、男の人なんて居なかったらしい。  「あの、男の人は何だったんだろう?」っと病院のベットで私が言うと、  お見舞いに来てた、まゆみが、とんでも無い事を言う。  「それは、蛍でしょ。」  「はぁ?そんな訳無いでしょ」っと声を上げて反論する。  「松山さん。病室では静かに話しなさい。他の患者さんがびっくりするでしょ。」っと他の患者を見ていた、看護婦さんが言う。  「ごめんなさい。もう、まゆみのせいで怒られたでしょ。」っとまゆみを睨みながら言う。  「だってさ、美亜の周りには蛍しか居なかったんだから、蛍を男の人と見間違えただけでしょ、美亜は怪我してたし。」っとまゆみが言う。  「そうなのかな?そうだよね、あんな素敵な男の人見た事無いし。」っとため息混じりながら言うと、  「あれ?美亜、もしかして、その男の人の事好きになっちゃったの」っとまゆみがニヤニヤしながら言う。  「そんな訳ないでしょ。」っとつい、又声を上げてしまった  「松山さん。」っと看護婦さんが言うのを聞き、  まゆみと顔を合わせて、  「しー。」っと口に指を当てて言った。  それから、私は無事に退院し、あれから、何回か、あの場所に行ったが、あの笑顔が素敵な男の人には会えなかった。  (やっぱり、怪我で幻を見たのかな?)っと思ってみたものも、なかなか、忘れる事は出来ず、あっという間に10年が経っていた。
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