プロローグ

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プロローグ

 「あなたは誰?」っと私が聞いてもその人は笑顔で微笑むだけだった。  ただその笑顔は本当に素敵でずっと側で見ていたくなる位にその人から目を離せないでいた。  「ねぇ、又会える?」っとその問いにも笑顔で応えるだけのその人は、今までに会った事の無い印象の人だった。  そう、その人は、人では無く、  ピピーピーっと目覚ましの音で目が覚める。  目覚ましを止め、  (あー、あー、又蛍の君(きみ)の夢を見た)っと思い背伸びをする。  私、松山美亜は、都内の大手会社に務めるOLで、会社近くのアパートで1人暮らしをしている。  「さて、」っと言い、  部屋に無数にある段ボールを避けながら洗面所に向かう。  顔を洗い、朝食じゃなく、昼食の準備をする。  もう、時計は11時を差していた。   (つい、休みだと遅く起きちゃうだよね、連日忙しかったし)っと思いながら、パンを焼く。  そう、今日は、休みっと言うより、有給を使う為に休みを取らされたんだけど、本日は7月の中旬で完全に夏休み、理由は8月いっぱいでお仕事を寿退社する為。  (あと、2カ月で結婚式か)っとカレンダーを見ながら、朝兼昼食を食べながら思う。  秋には、会社の先輩であり、若手のホープと言われ次期社長と言われる位優秀な婚約者である、神田 隆さんと交際1年半で結婚する事になったけど、  (なんか、隆さんと結婚が決まってからバタバタして、ゆっくりしてる暇なかったから今日は何しようかな)っと思い、鏡台に置いてある、隆さんに貰った婚約指輪をする。  (本当に綺麗、こんな沢山のダイヤモンドが埋め込まれてキラキラして)指輪を見ながら思う。   「美亜は、シンプルなのが好きだから、こういう形にしたけど、どうかな?気にいってくれたかな?」っと隆さんは私を見ながら聞く。  「うん。ありがとう。隆さん。こんなに沢山のダイヤモンド嬉しいよ」っと私が目を潤ませながら言うと、  「このダイヤの数は俺の美亜への愛情の証だよ」っと笑顔で私に言う。    っとニヤケながら、プロポーズの事を思い出してると、  「あっ、今日って7月中旬だよね。」っと1人事に呟くように言うと、鏡台の引き出しを開け、あるノートを出す。  そこには、蛍の生育時期や観察時期など蛍の事が書かれていた。  「そうか、もう蛍の時期なんだよね、だからあの夢を見たのかな?せっかくの連休だし、あの場所に行こうかな」っと呟き、私は、少し大きめのバックに下着など洋服を入れてると、ピコーンっとLINEが見ると隆さんだった。  「美亜、おはよう。ちゃんと起きてるかな?俺は今からお昼休みに入るけど、美亜は今日から5日間休み、連日俺が忙しい代わりに美亜が結婚式の準備して疲れてると思うから、ゆっくり休み取るんだよ。」  「お仕事お疲れ様、隆さん。私は、前にお話しをした例の蛍が居た場所に行って来る。又夜にでもLINEするからね。お仕事無理しないでね。」っと返す。  隆さんは、今新しいプロジェクトを任され忙しくて、結婚が決まってもなかなか一緒に準備が出来なかったけと、ウェディングドレスや衣装合わせは一緒に出来たからそれで充分なんだけど、だって隆さんは、私のウェディングドレス姿を見て、  「美亜、綺麗だな、俺こんな綺麗な人と結婚出来るなんて幸せだな。」っと嬉しそうに隆さんが言う。  「隆さんもタキシード姿、素敵だよ。」っと私も言うと、  「ありがとう。美亜」っと笑顔で返す。  っと又思いだしてると、ピコーンっと再びLINEが隆さんから  「美亜、行くのは、止めないが、もし、運転するなら、安全運転で、美亜は、まだ免許取って間もないんだから、それと、あっちに泊まるなら、ちゃんと着いたらLINEするように、それと、俺のあげた婚約指輪はしていくように。いいね、美亜、くれぐれも気をつけて行くんだからな。」っと行くなの圧力を感じる気がするLINEが返ってきたけど、  (結婚を控えてる訳だから婚約者に何かあったら困るから仕方ないけど)っと思いながら、  「うん。気をつけて運転するし、暗くなる前に早めにホテルに行ってちゃんと、LINEするから安心してお仕事してね。行って来ます。」っと返す。  出掛ける場所は、もちろんあの場所、そう10年前に私の初恋の相手である、蛍の君に会った場所。  社会人になって、この時期に休みが取れずなかなか行けなくて、最後に行ったのは3年前かな?あの時も蛍の君には会えなかった、無理も無いよね、あの場所はもう、10年前とは違うんだから。  でも、今回が最後にする、だって私は隆さんと結婚するんだから、最後に会って、ずっと聞きたかった事を聞くんだから。  そう決意して、私はバックを持ちアパートを出る。
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