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 俺はそんな心霊オタク白波将兵とキャッチボールをしている。彼は当時高校生にして時速150kmの剛速球を投げていた努力と才能の塊。かたや俺は50m走をのんびり10秒かけて走り体育教師に「もっと燃えろ」とスポ根漫画のような台詞を吐かせた真面目系クズ。何故キャッチボールの相手に俺を選んだ、白波君よ。しかもグローブは右投げ用。俺は左利き。箸も鉛筆ももちろんボールを投げるのも全部左手でこなす。ただでさえ向こうに届かないボールがさらに情けない放物線を描いて転がる。それでも白波君は何も言わない。駄目出しをするわけでもなくアドバイスをするわけでもなく褒めて伸ばすわけでもなくただボールを拾って投げる。白波君は口下手だ。二郎君もそこまで喋る方ではないが彼の場合は我慢している。本当は言いたいことがあるのに胸の内にしまっている。白波君は多分違う。そもそも喋りたくないのだと思う。しばらくそんなキャッチボールにもならないキャッチボールを続けていると白波君が口を開いた。 「しゃがんで」  俺はしゃがむ。 「グローブ前さ出して」  俺は左腕を前に出す。 「もっと上」
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