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「ほほう」
中華まんを頬張る白波君を眺めながらペットボトルのコーヒーを飲んだ。一応眠気覚ましと思い選んだが俺にとっては気休めでしかない。胃に食べ物を入れて少し落ち着いたのか白波君の顔はいつものぶすっとした表情に戻った。お茶をドリンクホルダーに置くがそれには手を付けようとしない。
「なんで家と違う方向に来てるんですか」
「霊魂連れて帰りたくなくて」
「なるほど」
「もう車動かすのも怖い」
正直、怖いならさっさと車を飛ばして帰れば良いものをとは思う。俺には理解できない心情が彼の中にはあるのだろう。それから彼は少し躊躇うようにうつむいてから「トイレ行きたい」と呟いた。
「おしっこならその辺でしてくればいいんじゃないですか」俺は窓の外を指差す。この辺りだとコンビニも遠い。向こうに庁舎の明かりは見えるがもう閉まっているだろう。
「一緒に来て」
「えー」
「怖い」
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