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「いないですよ」さっさと済ませてほしいので、いたとしてもいないと答えるつもりだった。白波君はまだ股間をごそごそしている。この寒さだとちんちんも縮こまっていそうだなと思いながら辺りを見回す。そのうち地面に水がぶつかるような音がしたのでちゃんと出たのだなと思った。小便の水音が聞こえるくらい静かな夜だった。火の玉らしき光は見当たらない。俺はテレビをよく見るし暗い所で本も読む。その割には視力が落ちなかった。裸眼でも日常生活は送れるし原付も乗れる。だから火の玉が出現すれば見つけられるとは思う。無事トイレタイムを終えた白波君とフィットの車内に戻った。膀胱に余裕のできた白波君がペットボトルのお茶を飲む。しばしの沈黙。まさかこの沈黙を貫いたまま火の玉の出現を待つつもりか。というか眠くなってきた。ここで眠ったら俺が来た意味がないじゃないか。俺は眠気覚ましを期待して口を開いた。
「最近どうですか」
「どう」と呟き白波君が上を見る。「俺の球どうだった」
「速かったです」
「そうか」
「今でも練習してるんですか」
「うん」
「そんな感じしました」
「今度教えて欲しいって」
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