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 白波将兵は俺よりひとつ歳下。身長は俺の方が少し高いぐらいだがややがっちりした体型の彼と比べると俺が小柄に見える。星口玩具の社員白波康介とは兄弟で7歳差。茶色に染めた髪を耳のあたりまで伸ばしている。今日はグローブと野球ボールを持って星口玩具へやって来た。彼は高校生まで野球をやっていた。かなり熱心に打ち込んでいたと思う。才能もあったと思う。野球の名門校で1年生にしてレギュラー入りを果たし甲子園で準優勝。来年は優勝旗が白河の関を越えるかと期待されていた。プロも注目していた。が、その翌年春の甲子園の直前に後輩へ暴力を振るい停学処分。周囲からのバッシングに折れた彼はマウンドから姿を消した。それから何やかんやあって今では立派な心霊オタクとしてそこそこ楽しそうに生きている。無愛想なので楽しそうな表情こそ見せないがあれだけEMF探知機を持ってそこら中駆けずり回っているのだから夢中であることには間違いない。その癖臆病で気が小さく心霊スポットに積極的には向かわない。EMF探知機を使うなら真っ先に心霊スポットに行くだろ、葛岡墓園とか。  それはともかく。
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