初めての荷物引渡し

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初めての荷物引渡し

 初めての荷物引渡しは、術後1日置いてからでした。  手術当日、とりあえず日をまたいで2時くらいまで仕事をしながら待機してましたが、連絡が入る様子はなく、私は一旦就寝。 5時過ぎに起きて仕事を始め、8時くらいにいったん連絡を入れました。  まぁ多分返事はないやろなと思いながら仕事をして買い物先のスーパー(車で片道15分弱)について携帯を確認したら、なんと折り返しの連絡がきてました。  まさか連絡が来るとは思ってなかったので、どれどれと内容を確認。 わりと元気で、鼻から胃に入ったチューブは頼み込んで取ってもらったとのこと。 口の両脇からは縫い目から出る血液を取るためのチューブが出てる顔写真が来ました。  両頬の下の方が、ふっくら腫れています。かなり太ったらこんな感じになるのかな、といったギリギリ自然の範囲の見た目。  口にチューブ=幼少期末期癌やったばあちゃんのたん吸引が使ってたぶっといもの、という認識しかなかったので、ひょろっとしたチューブに驚き!  医学は進歩してるのです。ンー十年前のばあちゃんのたん吸引の極太チューブと同じではなく、カルチャーショックを受けました。  点滴栄養になって、かなり楽になったようです。  さすがにまだ水やゼリーは要らないようですが、昨日見た今にも死にそうな様子からは想像できないくらい、写真からイキイキした感じが伝わってきて安心しました。  手術翌日には、レントゲンを取りに行ったようです。他の人のブログなんかを見ると、手術をしてすぐにレントゲンを撮る情報は入手済みだったので、慌てずに済みました。  尿道はカテーテルを無理やりネジ入れたため、出血があるとのこと。 尿とりパットを持ってきてくれと頼まれたので、どんなものか聞いてみました。 「おむつみたいなやつやって」という連れ。 怪しい。 尿とりパットって介護用オムツから、ライトに使えるパット式まであるので、これは看護師さんに確認してから購入するのが無難と判断しました。  連れが入院している病院は、地下にコンビニだけでなく、日用品を売っているお店があります。どうやら院内の日用品店で売られている様子なので、そこで購入すればいいと連れから言われました。  こういうときは、指示に従うに限ります。  尿道カテーテルは、私も経験済み。失敗はしませんでしたが、私の場合は管を取るまで放置の状態。着替えをするとか体を拭く、といった最低限の尊厳に重点を置いてなかった病院だったようで4日間着替えませんでした。  そのとき初めて大きな病院に入院したので、着替えをする、しないといった日常生活をどう過ごせばいいかわからなかったままだった。  自分と同じ思いを連れにさせる気にはなれなかったため、片道1時間かかっても1日おきに着替えの回収と必要なものを渡すつもりでいました。  着替えをして、持っていったシャツを着てズボンも履いたと連れから連絡があり、またびっくり! 尿道カテーテル取れてないのに、ズボン履いたのです。どうやったのか、全くわからず。のちのち聞いても訳が分からなかったけど、履けるようです。  シャツも首元が広いものがいいらしく、明日荷物の引渡しをしに行く途中でスーパーに立ち寄って買っていくことにしました。  点滴栄養は、基本的にお腹が空きません。 水も栄養も点滴から補えるから、体が欲しないんじゃないかなと思います。実際私が入院していた時も点滴栄養の時期は全くお腹が空かず、喉もかわかず。不思議な感じでした。  連れは食いしん坊ですが、いくらなんでもお腹空かないだろうって高を括ってたんですが......。 「明日来るとき、ポカリ買ってきて」 手術の翌日から腹は減り、喉も乾くようで。 マジかよと思いつつ、500mlのポカリも買うことになり、思いのほか大荷物になります。  口の中を切るので、血が口の中にたまって飲んでしまうみたいです。  度々気持ち悪くなって、吐き気止めと傷口の痛み止めを貰ったと報告がありました。  気持ち悪いなんか言われたら、点滴のなにかがあってなかったんじゃないかとハラハラ。病気は夜悪化するから、夜になると連絡が入るかもしれないと、気が気じゃなく不安でメソメソしながらその日も夜中まで仕事をしました。  翌朝。  唾がうまく飲み込めなくて、眠れなかったと連れから連絡。  連れ同様に私も寝たり起きたりで、なかなか安心できないままでしたが、寝れてるので運転はできます。  朝10時過ぎに家を出て、とりあえずシャツを調達しにちょっと大きなスーパーに行きます。30分くらい車を飛ばして着くスーパーですが、途中で事故があり、迂回路が激混みしたので45分くらいかけてスーパーに到着。  連れからの連絡で、ポカリはまだダメらしく、水を買うことになりました。 「水5本、ポカリ2本お願い」 3.5Lです。 それに着替えがあるので、ちょっとした荷物の範疇を超えてます。 小さい袋しか準備してなかったので、スーパー内にある100均で急遽大きめの袋を入手。 真夏の熱気が籠る車内で、汗かきながら荷物をまとめました。  病院へは、スーパーからだとギリギリ1時間を切るくらいの時間がかかります。 術後間もなくなので、顔は見れないだろうと思いつつ車を走らせました。  病院に到着したら、なんと駐車場がガラガラ!この病院の駐車場は3階建てで、毎回車がギッチリ。空きがあればそこに入れろって感じです。 なのにガラガラ......。 頭パーなので、ラッキーって思って荷物を持って正面玄関近くの駐車場2階の病院への通路直通の場所に車を停めました。  重い荷物を持ってよろよろ玄関まで行くと、何故かガラスのスライドドアが開かず。 入れないことを連れに伝えようと携帯をポケットから取り出して、初めて週末であることを知りました。  正面玄関から離れ、迷いながら看板を頼りにもうひとつの入口へ。 そこもスライドドアが閉まっていて、ピンポンチャイムを鳴らして入る仕組みになっていました。  チャイムを鳴らすと、チャイムからおじさんの声。 「はい、どういったご要件ですか?」 まさかそんな展開になるなんて、全くの想定外。私の頭は夏の暑さも手伝って、一瞬で真っ白になりました。 「えっ、と......。あの、め、面会です!」 「面会?んーと、とりあえず入ってください」 渋い返事のあと、ガラスのスライドドアが開いて、とりあえず院内へ。中に入ると、右側に守衛のおじさんがいて、手招きされました。 「今は面会って言っちゃいけないから」 「すみません、初めてでわからなくて」 「荷物の引渡しって次から言ってね」 割とキツめのお叱りを受け、3Lを超える水分+‪αを抱えて、院内にある売店へ。 しかし週末だったので閉まっていました。  エレベーターに乗って、売店が閉まっていたことを連れに連絡。 私はもやし体型なので、息も絶え絶え状態です。  病棟への通路がある階に着いてエレベーターを降りると、いつもの混雑さが嘘のよう。 病院が閉まってる日なので当たり前ですが、受付も各科も人はゼロ。照明も最低限度しかついてないので、ドラマとか映画の中みたいな不自然な静けさに鳥肌がたちます。  荷物を担いで、足音がこだまする院内を歩き、病棟へ。守衛さんに荷物の引渡しをつげ、コロナチェックの紙を書いて入院している階までエレベーターで上がります。 もちろん息は絶え絶え、汗ダラダラです。  ナースステーションに荷物の受け渡しの件を伝えると、看護師さんが対応してくれました。 「重いです、すみません」 身内に看護師がいるので、力仕事なのは重々承知していますが、水3L越えの荷物なんかそう無いはず。 「大丈夫ですよ」 にこやかに言って荷物を看護師がもつと、ズシンと重みがかかったようで、背姿でもビックリしてるのが伝わります。  一昨日切ったばっかりだから今日は来ないだろうし、看護師さんから荷物を引き取ったら帰ろうかと思っていたところで看護師さん到着。 「ご本人様、今から来るようなので少しお話しますか?」 え、くるんかよ!と思いつつ、「わかりました」と返してステーションの前で待ちます。  感染予防のため、ステーションの前で2m離れて10分ほどと言う条件で会うことになりました。  もっとヨロヨロになりながらくるのかと思いきや、車椅子に乗って看護師さんに押してもらい、颯爽と連れ登場! 元気そうで安心しました。 「元気そうやん」 「鼻のチューブ取ってもらったら、かなり楽になった」 こないだ電話の向こうでオエオエいってたのが、嘘のよう。  夜はあたり眠れてないようですが、入院してるんで寝れる時に寝れば問題ありません。 私が入院した時は、輸血(体内出血が致死量だったため)と、抗生物質やら栄養やらで、6本点滴をしていました。 連れは2本くらいだったので、片腕が自由に使えそう。なにかするにしても、片腕自由に使えればかなり楽なはずです。 「思ったよりしっかり喋れるな」 「うん」 連れは口の両端から細いチューブが出ているため、マスクをしてない状態。私はもちろんマスクをしてるので、暑くて口周りはムレムレです。  週末なので、看護師さんは少なめ。一瞬ステーションから人が居なくなったときに、連れがイーっと口を開きました。 視力0.2の私はよく分からないながらも、口の中がバイキンマンのギザギザの歯の様になっているのを確認。 「どうなってるん?」 「器具にゴムを付けてる」 「なんで?」 「口が開かんようにしてる」 「へぇ〜」 人生知らないことだらけ。顎を斬ると、前歯から奥歯にかけてゴムをかけて、顎が開かないようにするようです。  会話も程々にして解散。 連れは病室に戻り、私は病院を出て車に向かいます。 8月にしては涼しくて、うっすら汗をかく程度の気温でした。  帰り道、ドラッグストアに立ち寄って尿とりパットを購入。 帰る寸前に看護師さんに、尿とりパットの形を聞いていて正解でした。 連れはオムツ型と言っていましたが、看護師さんはパット型と教えてくれたので、間違ったものを買わずに済みました!  尿とりパットと言っても、かなり種類がありますね。そんなに大きなドラッグストアではなかったけど、何種類もあってビックリしました。  帰宅後に連れに連絡を入れて、適当に食事を済ませて休憩。 預かった洗濯物を洗濯機に入れます。 カーナビに入れた帰宅経路を信じたら、1度裏切られて見知らぬ住宅街を走ってしまったため、疑いながら運転しました。  連れの顔の腫れは、写真より少しだけ腫れが酷くなった感じ。 もっと顔全体がパンパンに腫れて、鼻とか目の周りくらいまで腫れ上がるのかと思ってたけど、そこまででもなかったので一安心です。  仕事が残ってるので、働きながら連絡を取り合い、連れは夜9時くらいに一旦就寝。 私は仕事開始です。  1日置いて、次回は平日会いに行きます。 空きの1日で買い物と家の事を片付けるので、休めるような休めないような......。 その日も深夜まで仕事をして、全ての仕事を終わらせて寝ました。
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