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なしてやろうか。雪が降り出したごたる。昼に、太うして気色ん悪か雲から黒か雨が降って、真夏の夜やっとに、今度は白か雪……。星空からハラハラと、所々に火と煙が残っとる焼け野原に、まるで祈りの数だけ降りよるごたる。大空襲で先に亡(の)うなって天国に上げられとる信者の皆が、これから死ぬるうちたちのために唱えよる祈り……。
うちは、真冬の雪の夜に、浦上養育院の前に産み落とされとったけん、ユキと名づけられました。浦上四番崩れのキリシタン総流配から五十年目、大正九年のことです。「浦上の姉(あね)さん」と呼ばれた岩永マキの戸籍に、最後の最後に入った捨て子でした。余命僅かやった「姉さん」にだけ産声が聞こえたそうで、その日は凍え死なんで済んだとです。
雪の夜に生まれて、そいで今日、雪の夜に死ぬるなんて……長崎で生まれ育って生涯ば終える人間では、珍しかとじゃなかろうか。きっと、天主様の思し召しばい。
どこからか、綺麗か歌声が聞こえて来よる。常清の女学生たちやろうか。ああ……賛美歌の合唱やなかね。
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