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第一章『アゴ入り娘side』
「なぁ、あれってアゴ入り娘じゃね?」
ナオが道路を挟んだ向こう側の道を歩く人物を指し示しながら言った。
「えっ、どこどこ?・・・あっ、本当だ」
隣を歩くトモもその姿を確認。
「着物着てどこかにお出掛けかな?」
さらにその横のレナがアゴ入り娘の服装に興味を抱く。
「もしかしてデートとか?」
「それはねぇだろ。まず相手いねぇし」
トモの言葉をナオがバッサリ否定し、続けて予想。
「趣味のお見合いなんじゃねぇの?着物だし」
「勝手に趣味にしたらダメでしょ」
レナが苦笑いで注意する。
「面白そうだし付いて行ってみようぜ」
ナオがとんでもない提案。
「先生の邪魔しちゃ悪いって」
「それにこれからタカの所に行く予定じゃん」
二人が揃って止めるも
「じゃあ、俺一人で行くからお前らはタカの家に行けよ」
好奇心旺盛なナオは自分の意見を曲げない。
「も~、わがままなんだから」
「タカには私が連絡入れとくね」
結局折れる二人。
なんだかんだで二人共気にはなっていたようだ。
三人は横断歩道を渡って向こう側へ。
「アゴ・・・阿部先生~」
危ない、危ない。
危うくあだ名で呼ぶところだった。
休みの日まで怒られるのは勘弁だ。
ちなみにアゴ入り娘というのはあだ名で、ナオ達の高校の国語教師・阿部タイ美のことである。
アゴ入り娘のことを詳しく知りたい方は本編第1弾『俺達のいたずら屋敷』をご覧下さい。
急に名前を呼ばれた阿部はびっくりして振り向く。
「あなた達は・・・こんな所で何してるの?」
ナオ達を見た阿部は明らかに一瞬嫌な顔をした。
まぁ、普段から手を焼いている生徒達ですから、特にナオは。
「ちょっとぶら~っと。先生こそ、そんなおめかししてどちらへ?」
「別におめかしなんてしてないわよ。普段通りよ」
「またまた~。もしかしてお見合いですか?」
ナオが核心をつく。
「なっ、そっ、そんなわけないでしょ」
図星だ。
「もぉ、ナオ。あんまり先生のプライベートに踏み込んじゃダメよ」
トモがストップをかける。
「じゃあ、先生頑張って下さい。さっ、行きましょう」
レナがナオの手を引き、トモが背中を押してその場を離れようとする。
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