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多分ここは彼の部屋だろう。今まで何度も彼を見てきたけれど、彼の家に行ったことは一度もなかった。毎日学校や通学路で会うことがお決まりになっていた自分にとって、彼のプライベートが露となるこの場所にたどり着いてしまったことに僕は若干の驚きを覚えた。ここに繋がったということは、ここに彼が居るということだろう。部屋を見渡そうとして、すぐに彼を見つけた。彼はベッドに座り、どこか遠くを眺めていた。
「優等生を演じるのって大変?」
声をかけると彼の肩がビクンと跳ね上がった。そしていつも通り冷たい眼差しを僕へ向けた。
「勝手に人の部屋入らないでくれる?」
「君の部屋ってことは僕の部屋でもあるよね、僕は君の分身だから」
彼の近くへ行きたい一心でベッドに腰かけようしたけれど拒まれてしまって、仕方なく僕は床に座った。
「ねぇ、質問をしてもいいかな?君にとっておきの質問があるんだ」
「……何?」
珍しく、僕は緊張していた。
恐れるな、恐れるな自分。
彼の目を見つめる。大きく息を吸い、今一番聞きたいことを伝えてみる。
「君はどうして生徒会長になったの?」
その問いに、一瞬彼の呼吸が止まった、気がした。
「……は?学校を変えるため、より良くするために決まってるだろ」
「へぇ~学校のためなんだ」
全校の前で何度も話しているからだろう、学校を変える、より良くする、そんな言葉をすらすらと並べる彼が、どうしても哀れに見えた。一つ一つが薄っぺらい。君には誰にも言えない、僕だけが知っている事情が在るというのに。
「自分のためでしょ?」
彼が動揺することを分かっていながら、わざと僕は彼の核心をついた。案の定彼の目は大きく見開かれ、大人びた落ち着きは見事に剥がれ落ちていった。
僕よりも無様だな、そう思いながら、僕は彼が壊れていく様子を無言で見ていた。
彼は微笑んだ。明らかに苦しそうな顔のまま。
「そんな訳ない、そんな理由で生徒会長だなんて、自分のためだなんて……そんなのおかしい……そんな訳……」
「悪いけど誤魔化したって無駄だよ。君は生徒会長になって、自分の理想像を演じている、そうでしょ?」
「違う……」
「違う訳がない。優等生を演じておけば誰かが褒めてくれる、常にニコニコしておけば、常に自分の周りに人が集まってくる」
「やめろ……これ以上喋るな」
「いつも振りまいている笑顔だって全部偽造なんでしょ?僕知ってるよ。本当の君はいつもどこか人を軽蔑していて、全てがどうでも良くて、誰のことも信用していなくて、それで」
「やめろって言ってんだろ!」
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