第0章 目覚める

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どういうことだろう、どうして僕は、そこに立っている彼のことを自分であると思ったのだろう。僕は全身が冷たくなっていくのを覚えながらひたすら彼だけを見続ける。仮に彼が自分だとすればこの世界には自分が二人存在することになる。そんなこと、僕は信じたくもないし多分あり得ないことだろう。 けれど彼の顔も、声も、細かな仕草や癖も、全てが自分と似すぎている。いや、似ているんじゃない、コピーしたかのように、本当に同じなんだ。 誰がどう見ても、彼は正真正銘、僕だった。 彼はたくさんの生徒に囲まれながら爽やかな笑顔を振りまいていた。 そして、彼だけは、誰も見ることのできないはずの僕をしっかりと見ていた。
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