第一章 偽りだらけの優等生

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学校が終わり、今日もたくさんの生徒の目を惹き付けながら彼は廊下を歩いていた。なんせ彼は生徒会長だ。姿勢良く堂々と足を進めるその姿はまさに生徒の鏡である。いつも通りの爽やかな笑顔で手を振るその後ろを一人寂しく追いながら、僕は彼との関係について頭の中で整理していた。もちろん自分は誰からも見えていない。 彼と出会った時、僕は何か変な夢を見ているだけだろう、そう確信していた。けれど彼と過ごす時間が増えていく度にこれはハッキリとした現実であるということを知り、そして、僕と彼の少し変わった関係に気づくことになるのだった。最初、彼は僕の分身のような存在だと思っていた。しかし、結論から言おう。彼が僕の分身だったのではない、僕が彼の分身だったのだ。 駅に着くとすぐ、彼は前方にいた友達らしき生徒に名前を呼ばれた。その瞬間、一瞬で彼の表情があのお約束の笑顔へ切り替わり、彼は僕を置いて走って行った。取り残された僕は追いかけることなく彼の後ろ姿をじっと見つめた。一見楽しそうに、幸せそうに会話を交わしている彼だけれど、僕から見れば全てが偽装工作にすぎない。 案の定、彼はすぐに友達と別れた。振っていた手を下ろした瞬間顔面に張りついていた笑顔が一気に消えて、そのギャップに少し笑えた。
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