第三話

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 あの財布に、いったい何が入っていたというのか?  人に見られては、よほどマズイものが入っていたのか?  だとしても、本当に俺は何も見ていない。 「残念ですが、どちらにせよ、もう手遅れですね」  手遅れ?  どういう意味だ?  男の合図で、俺は再び口をタオルで縛られると、頭からすっぽりと麻袋をかぶせられた。  必死に叫ぼうとしても、抵抗しようとしても、それは無駄なあがきにしかならず、車は俺を乗せたまま走り出した。  長い間、走り続けていた車はどこかに到着したようで、そこで俺は車から降ろされたが、ここがどこなのかは分からない。  ただ、潮の香りと波の音が聞こえる。  ここは……海なのか? 「あなたは手を出してはいけないものに、手を出してしまいました。これは、その代償です」  その言葉は、俺の終焉(しゅうえん)を予告しているように聞こえた。  (かつ)がれていった先は常に揺れていて、どうやら船のようだった。  俺は……本気で殺されようとしているのか?  そう思えば思うほど、全身の震えが止まらない。  どうして……俺が……。  金を……盗んだだけなのに。  どこまで船が進んだのかは分からないが、途中で船の動きが止まると、そこで俺は足に何かを巻かれた。  本当に……ここで俺は死ぬ、のか?  身体が持ち上げられた次の瞬間、宙に浮いたかと思うと、すぐにやってきたのは叩きつけられたような衝撃だった。  ジワジワと麻袋から染み込んでくるものが鼻と口に入ってくる。  俺は、海へ投げ込まれたのだ。  泳ぐことすらできず、ただひたすら沈んでいく中、息もできずに意識が遠のいていく。  いったい、あの財布には何が入っていたんだ?  誰か……教えてくれ! (完)
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