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無差別テロを計画した動機については、日頃から社会に対して恨みがあったと自供している、と書かれていた。
その新聞の日付は、二ヶ月前のものだった。
いったい俺は……何から逃げていたのか?
「すみません、お金を……少しでいいので貸してもらえますか?」
老人は少し驚いた顔をしていたが、自販機の下からコツコツと集めていた小銭を俺に差し出してくれた。
「ありがとうございます。必ず……倍にして返しに来ます」
そのわずかな小銭を握り締め、俺は老人へ深く頭を下げた。
電車に乗って向かったのは、実家だった。
こんなボロボロの格好をした俺を見たら、母はどう思うだろうか?
それよりも、今まで消息を絶っていたことに、ひどく心配していることだろう。
少しずつ実家が近付いてくるにつれ、俺は母への言い訳を考えるので精いっぱいだった。
実家まで、あと数メートルというところで立ち止まった俺は、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
その時、近くに停まっていた白いワゴン車から二人の男が出てくると、ものの一瞬で、その男達に俺は車の後部座席へ連れ込まれてしまった。
この男達は……誰だ?
どうして俺を……?
男達は慣れた手付きで素早く俺の手足を縛ると、口もタオルでふさがれた。
身体の自由がきかない中、必死で抵抗する俺を助手席に座る男が覗き込んできたが、その顔に俺は息をのんだ。
その男は、新野セイの使いで謝礼を持ってきたヤツだった。
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