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とある町に小さな研究所があった。
一人の博士と一人の助手。
研究所で働くのはその二人だけだった。
博士は所謂ところの発明家で、彼の発明品を売る事で、研究所は運営されている。
いつもの様に博士は何かを作っている。
助手はその隣に立って、スマートフォンを弄っていた。
時折、お愛想程度に博士の方へ視線は向けるものの、そこに興味の光はまるっきり無かった。
「すまんが、七番の口金を一つ取ってくれ」
博士は作業している自分の手元を見たままで助手にそう話しかけた。
しばらくたっても反応は無く、隣を見ると相変わらずぼんやりと立ってスマートフォンを弄っている助手がいた。
「おい、聞こえなかったのか? 七番の口金だ」
「え、俺に言ってます?」
「そりゃ、ここには君とワシしかおらんのだから、当然君だ」
「……そっすか」
どこか憮然とした表情で、のろのろと助手は動き出す。
眉を蜂の字にしたままその様子を見ていいた博士の前で、助手は口金をしまってある引き出しをかなり乱暴に開けた。そして、ガチャガチャと音を立てながら引き出しの中をひっかきまわす。
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