番外編その2―進路のお話―

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番外編その2―進路のお話―

「そういえばさあ、安芸は進路どうするか決めてある?」 俺達も、もう高校3年。大体の人は、もう自分の進路を決めている時期だ。 受験をする人もいれば、就職をする人もいる。自由にフリーター等をする人もいるようだ。 放課後、帰宅の途につきながら隣を歩いている安芸を見上げる。 ああ、今日も横顔が美しいなと、まるで最高峰の絵画を見ているような気持ちになりながら尋ねた。 「俺は、受験するよ。一応、第1志望はM大」 「まじ?俺も、M大志望なんだけど…!!」 まさかのここにきて、志望大学が同じ事が判明し浮かれに浮かれてしまう。 安芸は安芸で、驚いた様に目を瞠っていた。 「志望大学同じとか凄いな。何科志望なの?」 「俺は、理学部!安芸は?」 「え、俺も理学部!志望学部も同じとか凄いな」 学部まで同じなんて! 奇跡のような偶然に、最早運命さえ感じてしまう。 「こうなったら絶対受かって一緒にM大行こうな!」 「うん。あ…もし受かったら、一緒に住もうか」 「え…」 「一緒に住むって目標があったら、俺も受験頑張れそうだし。勿論、花菱が嫌じゃなければだけど」 「い、嫌なわけない!一緒に住む!一緒に住みたい!え、これって同棲って事だよな?!まじやばい…俺、絶対受かる未来しか見えないわ」 「ははっ、俺も」 安芸が満面の笑みで、嬉しそうに俺の頭を撫でてくれた。 俺はといえば、胸が一杯すぎてどうしたらいいのかわからない程に幸せに満ちている。 勿論、一緒に住もうと言ってくれた事は物凄く嬉しかった。だが、それ以上に安芸が俺との未来を考えてくれている事が何よりも嬉しかったのだ。 俺自身、この先安芸と別れるつもりなど毛頭ないし、馬鹿だと笑われるかもしれないが、できれば老後も一緒にいたい。おじいちゃんになって手がしわしわになっても、2人で顔を見合わせて笑いあっていたい。 でも、安芸は違うかもしれない。この先の不確定な未来を考えて甘い夢に浸っているのは自分だけかもしれない……なんて、俺らしくもない事を心の隅の方で考えていた。 けれど、安芸は来年の話をしてくれた。しかも、自分から。これがどんなに嬉しい事か。 今すぐ大声で叫んで走り回りたい程に嬉しい。 「受験終わったら大学の近くで部屋探ししないとな」 「もう受かる前提?」 「当たり前!同棲なんて甘すぎる餌ぶら下げられてしくじるわけがない!」 俺の言葉に安芸が楽しそうに笑う。 そんな安芸の楽しそうな表情に堪らなくなって、周りに人がいないがささっと確認した後、背伸びをして唇を奪った。 「…不意打ち」 「ごめん。なんかもうキスしとかないと色々気持ちが爆発しそうで…」 「ふはっ、爆発って」 「だっていつも安芸が嬉しい事ばっかり言うから幸せすぎて、俺の胸はそのうち許容オーバーで大変な事になる」 「許容オーバーしないように耐えてくれないと困る」 だってこれからもっと幸せは増えていくんだからと言って、お返しとばかりにキスをされた。 ……大好き。
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