振り向いて、安芸くん!

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その後、妹は30分くらい好き勝手話したあと『昨日オールで鑑賞会やっちゃって寝てないから寝るわー』等と言って自分の部屋へ戻っていった。 本当に嵐のような奴だなとつくづく思う。 「あれだな、本当に顔似てるな」 悪魔が去って行ったドアの方に視線を寄せていた安芸がしみじみといった様子で言った。 「……不本意ながら。ほんと、折角来てくれたのに騒がしくて申し訳無い」 「いや、楽しかったよ。LUCA君についても知れたしな」 そう言って笑ってくれる安芸は本当に神だと思う。 安芸の優しさをひしひしと感じながら、すっかり氷が溶けてしまったお茶を飲む。 どうやら俺は思っていたよりも喉が渇いていたらしく、一気に半分飲み干してしまった。 「あ、そういえば花菱ってバイトとかしてる?部活は入ってないもんな」 「バイトは火曜日と金曜日だけやってる。時給いいから居酒屋のバイト」 「俺もバイト居酒屋。俺は、シフトによって出勤日違うんだけどバイトとか予定ない日は一緒に帰ろうか」 「え!いいの?!」 「だってお試しとはいえ付き合ってるんだし、なるべく一緒にいれる時間作りたいしさ。お試しとか酷い事言ってる俺が言うのも何だけど…」 「嬉しい…嬉しすぎる。俺、こんなに幸せでいいのかな」 バイトだってあるし、友達付き合いだってあるだろうに、俺の事をちゃんと恋人として優先してくれる。 そんな安芸の優しさにきゅんとしてしまう。 好きが溢れそう……。 恋人(仮)の時点でこんなに幸せなのに、もし正式な恋人になれたらどうなってしまうんだろう。 俺、溶けて無くなるかもしれない。本気で。 とりあえず月曜日、成海に話聞いてもらおう。誰かに話さないと色々やばい。 その日安芸は、何故かテンションが高まっていた母さんが作った夕飯(稀に見るご馳走様)を食べてから帰っていった。 駅まで送っていったけど、何だか幸せすぎて胸が張り裂けそうで暫く改札の前から動けなかった。 ……また成海に、乙女かよ!ってツッコまれそう。
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