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「いや、俺はあんま外見とか気にしないし本人に似合ってるのが1番だと思ってる。だから、花菱はそのままでいいと思う。黒髪似合ってるし」
聞きました?黒髪似合ってるだって!!
はあ〜。安芸とお付き合い(仮)はじめてから、本当に幸せな言葉ばっかりもらってて大丈夫なのかしら俺。
この後、とんでもない不幸がおとずれるフラグとかじゃないよね?
「……ありがと」
「ははっ。花菱って、大胆な癖にすぐ照れるから本当可愛すぎる!前も言ったけど、花菱って大人しくて静かなイメージだったからほんとギャップ凄い」
「そんなに大人しいイメージ強い?」
「うん。俺の周りも、多分みんなそういうイメージもってるよ。同じクラスになったことないから余計そう思ってるのかもだけど」
なるほど。今は高3だが、安芸とは同じクラスになった事はないし安芸の周りの人達とも同じクラスになった事はない。逆に、成海とは3年間同じクラスだ。
きっと、同じクラスになった事がある人達は俺に対して大人しいイメージはもっていないと思う。成海を筆頭に。
「なんか、成海…あ、友達にも黙ってたらいいのに話したら阿呆とか馬鹿とか残念とかよく言われるな」
つい先日も言われた事を思い出して頷く。
「成海って、いつも花菱と一緒にいる人だよね?小柄なふわふわした髪の」
「そうそう!あいつが成海。小動物みたいな可愛い見た目してるくせに、中身はめちゃくちゃ男前なんだよ。口は悪いけど、凄い良い奴でさ。成海には何でも話せる」
「……へえ」
……ん?何か、安芸が笑顔なのに笑顔じゃない気がするけど気のせいだろうか。
変なこと言ったかなと首を傾げると、安芸はいつも通りの優しい笑みを浮かべてくれたので気のせいだったのかもしれない。
それから暫し、他愛の無い会話をして楽しくルンルン気分で過ごしていた時にそれは到来した。
「お兄ー、お茶持ってきたから開けてー」
自室のドアの外から聞こえてきた悪魔の声に、思わずげんなりしてしまう。
いつの間にか奴が帰ってきたらしい。
母さん、何故悪魔に頼んだんだ。母さんが持ってきてくれるんじゃなかったのか。と思いながら、仕方無くドアを開けたら、ズカズカと遠慮無しに入ってくる妹。
手にしたトレーには、ちゃっかり3人分のコップが乗っていて、横目で妹を睨む。
「初めましてー!柚月の双子の妹の那月ですー!え、てかやばい。推しのLUCA君にめちゃめちゃ似てるんですけど!!」
入ってくるなり、床においてあるクッションの上に座りハイテンションで安芸に話しかける妹。……やっぱりこいつは悪魔だ。折角の2人きりの楽しい時間を邪魔しやがって!しかもLUCA君って誰だ。あ、ポスターのこいつか!こいつなのか!いや全然似てないじゃん、安芸の方が何百倍もかっこいいじゃん。
突然怒涛の勢いで話しかけられた安芸は、戸惑いつつもニッコリと微笑んで自分の名を名乗っている。なんて優しい人なんだ。これぞ神対応。
「えーてか、お兄と安芸くんが友達とかまじ?全然系統違くない?お兄馬鹿だし阿呆だし迷惑かけてません?」
実の兄の事をそんな風にいうんじゃありません!と心の中で叱咤しつつも、ジロリと睨むだけにおさめる。……いやだって、後が怖いし。
「全然。花菱と親しくなったのは最近だけど、面白いし一緒にいると楽しいよ」
一緒にいると楽しい……
一緒にいると楽しい…
脳内で幸せホルモンが分泌されるのを感じながら、思わずニヤけてしまう。
そんな俺を、妹が不審な目で見てきたが気にしない。
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