番外編その1―成海と安芸―

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番外編その1―成海と安芸―

「……てことで、付き合う事になったんですよ!ねえ、聞いてる?!」 「キイテルキイテル」 「でさ、今日昼3人で食べようって事になったんだけどいいですかね?」 「………は?」 昨日、奇跡的に片思いが実り完全に浮かれモードなまま、学校に登校してくるなり成海に事の顛末を話した。怒られるので一応小声で。 で、紆余曲折あって安芸が折角だから成海とも話してみたいと言ってくれたので、それなら昼一緒に食べようぜー!となったわけで。 俺の話をいつも通りの塩対応で聞いていた成海が、眉間にシワを寄せて不可解そうに睨んでくる。 小動物のような可愛らしい顔立ちに刻まれた眉間のシワは不釣り合いすぎるが、最早見慣れた表情だ。 「…ダメ?」 「……」 「ほら。俺も1番仲良い友達の事ちゃんと紹介しておきたいしさあ」 自分勝手な言い分だとは思うが、自分の親友と恋人(照)が仲良くなってくれたらそれはもう物凄く嬉しいなあなんて。 成海は一瞬目を閉じてから、俺に視線を投げた。 「しゃあねえな…わかったよ」 ついでに安芸がどんなやつが探っとくか、だなんて物騒な事を言っていたが何はともあれ承諾してもらえて良かった! **** ―――昼休み。in 屋上扉前踊り場 「なあ、安芸は柚月のどこを好きになったわけ?」 軽く自己紹介を済ませ、それぞれ昼食を食べ始めた時に突然打ち込まれた成海の台詞に、危うく飲んでいたミルクティーを吹き出しそうになってしまった。 いやまあ…知りたいっちゃ知りたいけども、それにしたってタイミングよ。いきなりにも程がある。タイミングを見誤ってばかりの俺が言えた事ではないが。 恐る恐る安芸に視線を寄せれば、何だか少し悩んでいる様な雰囲気。 うわー…なんかもうこの待ち時間辛い。色んな意味で。 「ないの?」 「いや……ありすぎて困ってる。まだ1ヶ月しか関わってないのに、可愛いとこばっかり浮かんでくる」 「ひぇ………っ」 安芸の言葉に、思わず口から変な声が出てしまった。 「ふうん……例えば?」 「そうだな。すぐテンパっちゃうとことか、自分から言っといて恥ずかしがるところとか。……あ、胸見せてきたのは本当にやばかったな」 「ああ、なんか前に柚月が騒いでたやつか」 「いやもうすみません、あの件は忘れてください……」 本当に、あの乳晒し事件についてはどうにかこうにか記憶から抹消して頂けないだろうか。 あの時は切羽詰まってたんだ、だから致し方なかったんだよ。 あれから、そんなに自分の乳首はピンクなのか?!って割と気にしてたけど、安芸がそそられてくれるならまあいいかって事で俺の中では終了してるんだから! 「柚月は、ほんと阿呆だからな」 「面白いよな。ほんと、大人しいイメージだったからギャップが凄い」 「あー…こいつ、話さなければ物静かそうな美人に見えるもんな。話した途端に残念だけど」 「でもそこがいいとこだよな」 「まあな。見てて飽きないしな。あ、そういえば那月にも会ったんだろ?すげえ似てるよな」 「瓜ふたつでビックリしたわ」 「那月も性格凄まじいしな。あれはあれで見てて飽きない」 「たしかに、那月ちゃんも面白かった。花菱の妹って感じがする」 「めっちゃわかるわー」 何故か急に盛り上がる2人の話に耳を傾けつつ、ミルクティーをチビチビ飲む。 俺からしたら、成海のほうがよっぽどギャップが凄まじいと思うが。 ていうか、いつの間にか悪魔の話になってるし。 そもそも"那月も性格凄まじいけどな"って、まるで俺の性格も凄まじいみたいじゃんか! 「悪い、俺今までちょっと安芸の事勘違いしてたけど良い奴でよかったよ。これなら、安心して柚月を嫁に出せるわ」 「成海は俺の母親か!!」 「ははっ、成海は心配だったんだね。大丈夫、ちゃんと大切にします」 2人で話している内に大分打ち解けたらしい。 警戒心強めな成海にしては珍しいなと思いつつ、素直に嬉しかった。 やっぱり、なんやかんやで成海は心配してくれていたんだなと思うとニヤけてしまいそうになる。 それに、"大切にします"だって!! はあぁ……まじで幸せすぎてやばいよ。ありがとう神様仏様。 その後は、終始穏やかな雰囲気で楽しい昼休みを過ごす事ができ、俺の心はとても満たされていた。
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