振り向いて、安芸くん!

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夕日でオレンジがかった公園に降りる沈黙。 安芸は、ポカンとしたままフリーズしている。 そりゃそうだ。俺は馬鹿か。いや、馬鹿だ。正真正銘の馬鹿! だけど、言ってしまったものは仕方がない。 大分タイミングを見誤ったと思うし、完全にやらかした感は否めないが、付き合いたいのは本当だしこれはきっと神様が与えてくれたチャンスなのだと思うしかない。 俺の突然の告白からどのくらい時間が経ったのか。多分ほんの数分だが、あまりにも重たい沈黙のせいか数時間にも感じられ思わず唾をゴクリと飲み込む。 「えっと……花菱って俺の事好きなの?」 気不味い沈黙を破ったのは安芸のほうだった。 明らかに動揺しつつも、優しい声音で聞いてくる安芸にまた胸が高鳴る。 「…うん。俺、前から安芸の事が好きだったんだ。で、なんか色々気持ちが暴走して思わず口から出ちゃったっていうか…」 本当に暴走もいいところだ。たった今、彼女と別れたばかりの男に告白するとは。 俺自身、自分の発言にビックリしているが、きっと安芸の驚きは俺の比じゃないだろう。 隣の安芸を盗み見るようにして視線を寄せる。 安芸は、なんとも言えない表情で、考えこむように顎に手を当てていた。 「……花菱の気持ちは嬉しい。嬉しいんだけど、正直俺、男と付き合うとかって考えたことなくて」 それはそうだろう。俺だって安芸を好きになるまでは、まさか同性を好きになるなんて考えてもみなかったのだから。 「…だよな。ほんと、急にごめん」 多分これは、きっと振られたということだ。 自分の気持ちが実るなんて奇跡のような事だとは分かっていたし、ましてや一度振られたくらいで諦めるつもりもないが、やはり落ち込んでしまうのは致し方無いだろう。 思わず熱くなる目頭を何とか押さえ込むように、膝の上においた手をぎゅっと握った。 「だから、とりあえずお試し期間ってことでどう?勿論、花菱が嫌じゃなければだけど」 完全に振られたと思っていた俺は、安芸の発言を理解する事が出来ずに目を瞠ったまま口を開けて固まってしまった。 え…え?今、なんて?お試し期間…?え、何それ?夢? 「…やっぱ、お試し期間とか嫌だよな。ごめん」 「ちょっちょ、待って!全然嫌じゃない!寧ろ、嬉しすぎて混乱してフリーズしてた!え、夢じゃないよね?いいの?本当に?」 混乱したまま矢継ぎ早に言葉を発する俺を見て、先ほどまで暗い顔をしていていた安芸は可笑しそうに笑った。 「やっぱ花菱って意外すぎるわ。思ってたのと全然違う」 「ごめん!嬉しすぎて、なんかもう混乱が混乱を呼んでる感じで……って本当俺、やばい。頭悪い発言しかしてない」 「そんなことないよ。面白いし、可愛いって思った。あと、夢じゃないから。これからよろしくな?」 「あ……あ…はい!こちらこそ宜しくお願い致します!!!」 「ははっ。やっぱ、面白い」 あんまりにも嬉しすぎて、これはやっぱり夢なんじゃないかと思ったがどうやら現実らしい。
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