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あの日から浮かれ気分のまま過ごしていたら、いつの間にか3日が経っていた。
そして今は、ここ数日明らかに様子がおかしい俺を成海が不審な目で見てくるので、事の顛末を話している最中である。
「……は?お前、それでいいの?」
「え、何が?」
「だってお試し期間だぞ?しかも、今のところ安芸はお前に恋愛感情があるわけでもない。俺には、最終的にお前が泣く未来しか見えねえんだけど」
元々、成海には俺が安芸を好きだと言うことは話してあった。成海は口は悪いが、偏見などを持ったりはしないタイプなので有り難い。
そして、今の言葉も俺の事を考えて言ってくれていることは分かっている。
確かに、成海の言っていることは一理ある。…というか、多分正しい。
けれど、俺はお試し期間だろうがなんだろうが安芸と付き合える事になって単純に嬉しいし、出来れば正式に恋人にしてもらえるように頑張りたい。
「分かってるけど…。ちゃんと正式に安芸の恋人になれるように頑張るし、絶対に振り向かせてみせる!だって、こんな夢みたいな展開ある?無いでしょ。こんなチャンス浮かれずにはいられないし、とにかくやばい」
「…はぁ。本当、柚月って残念だよな。黙ってれば美人なのに、話した途端アホすぎる。……でもまあ、そこがお前の良いところだけど」
「ありがと、成海。らぶ」
何故か溜息を吐かれたけれど、全く気にならない。何せ、俺は今最強に無敵。脳内が幸せで埋め尽くされている。
「花菱くーん!安芸くんが呼んでるよー!」
思わずニヤけてしまう顔を成海にジト目で見られつつ、昼食のサンドイッチを噛っていたらまさかの訪問者。
口に入れた卵サンドを慌てて飲み込み、教室の入り口へ向かう。
訪問者の姿を見て、今日もあり得ないくらい格好いいなと見惚れてしまいそうなのを何とか耐えた。
「ごめん、いま平気だった?」
「うん!全然大丈夫。どうしたの?」
「俺、今日バイト休みでさ。良かったら一緒に帰らない?」
「え!うん!帰る!一緒に帰ろう!」
「ははっ。じゃあ、また放課後な」
はあ…今日も推しが尊い。何その笑顔、反則すぎやしませんか。
軽く手を振って自分の教室へ戻っていく安芸に手をぶんぶんと振り返しながら、幸せすぎて苦しい胸を手で押さえた。
「いや、お前乙女かよ」
いつの間にか側にきていた成海が、俺を呆れ顔で見ながらツッコミをいれてくる。
「やばいよ成海…これって放課後デートでしょ?」
「だな」
「うわあ。早く放課後にならないかな。そわそわが止まらない。何話したらいいと思う?てか、帰るだけかな?それともどっか寄るとか?」
「知るか。とりあえず、楽しんでくれば」
ああもう、本当に早く放課後になってくれないかな!
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