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それから、色んな話をした。
今は俺が提案した質問タイムなるものをしていて、お互いに気になることを聞きあっている。
ひとまず知った安芸の情報は、好きな色は黒で好きな食べ物は甘いもの。そして、動物が好きだということ。
安芸は見た目に反して、中身は可愛らしい一面もあるのだなと思った。
これがギャップ萌えというやつか…!!はあ…なんて尊いのだろう。
「じゃ、次は俺の番。……花菱は、何で俺の事を好きになってくれたの?」
先程までは、好きな色はだとかそういった些細な質問ばかりだったので、急に尋ねられた核心的な質問に思わずほんの少し動揺してしまった。
だが、折角の機会だと思った俺は、あの胸がときめいてしまった日の事を話す事にした。
好きになったきっかけは、俺の落とし物を安芸が拾ってくれた事だったということ。
結構ヤンチャな見た目をしているのに、見かけによらず耳触りの良い優しい声音と一瞬見せてくれた笑顔に惚れてしまったということを、少しだけ照れ臭さを覚えつつもはにかみながら話した。
「そっか……話してくれてありがとう。気になってたから聞けて良かった」
俺の話に真摯な態度で耳を傾けてくれていた安芸は、そう言って優しく笑んでくれた。
本来、男が男に好きだと言われたら、大概は困ったり引いてしまったりするものだと思う。
ましてや気持ちを受け入れたり、歩み寄ってもらえる事など稀な事だろう。
それなのに安芸は、戸惑いつつも最初から、嫌悪感を滲ませることも無く朗らかな対応をしてくれた。俺は相当恵まれているなと改めて実感させられる。
「こちらこそ聞いてくれてありがとう。じゃあ次は俺の番!安芸は、巨乳が好きなの?」
これは、あの別れ話を目撃してしまった時からずっと気になっていた事だった。
俺の質問を聞き、目の前に座る安芸はポカンとしている。
「え?なんで?」
「いや、ほら、万が一巨乳好きとかなら、俺は男だからツルペタだし、少しでも育乳したほうがいいかななんて…」
元カノが巨乳だったからさ!…とは言いづらい。
安芸にとって思い出したくない過去かもしれないのに、無神経に元カノの存在を口にするのは流石に憚られたので言葉を濁す。
「育乳って…花菱は、本当予想外な事ばっかり言ってくるな」
そう言って困った様に笑う安芸。
「巨乳ね。あー、正直あんま気にした事ないかもな。あったらあったでいいし、なかったらなかったでいいし」
「え、じゃあ俺みたいなツルペタでもいいってこと?」
「ん、気にしない」
「本当に?!あれだよ、本当にないよ?まっさらさらだよ?一応見てみて!どう?!大丈夫そ?!」
本当に自分は乳が無い。当たり前だが、安芸と同じ男性の身体なのだ。乳首だって、ちっちゃいし。
念の為、確認してもらおうと思い、制服のシャツのボタンを外してガバッと前を開いた。
自分でも改めて見下ろしてみるが、何度見てもツルペタである。
「え、ちょっ花菱!」
「見て!これで、乳がないから無理とかが理由で振られたら立ち直れないから」
関わってみて俺の性格が無理とか顔が無理とかで振られるならまだしも、乳が無いから無理が理由で振られたら流石に落ち込む。
なのできちんと見ておいてほしかった。
安芸は一瞬泳がせた視線を、ゆっくりと俺の胸元に向けた。
ジッと見つめてくる安芸の瞳。ああ、安芸の瞳は薄茶色で綺麗だなと思うのと同時に、何故か徐々に湧き上がってきた羞恥心。
え……今更だけど、俺何してるんだろう。
好きな人に、唐突に乳晒すとか最早変質者でしかないのでは。
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