偽りの夫婦

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偽りの夫婦

「えっ! 星那、結婚してたの!? いつ?」  親友の麻衣(まい)と二ヶ月ぶりに会った私は、今の自分の状況をどう説明しようかと、思案を巡らせていた。  社会人一年目の私たちは、二ヶ月に一度、駅前のカフェでお互いの近況を報告し合っている。 「あー……。一ヶ月前だよ」  この言葉は、嘘ではない。  ただ、夫婦となった相手についての伝え方に迷っていた。 「いつの間に? もう、そんな大事なこと、どうしてすぐに報告してくれないのよ!」 「ご、ごめん。色々バタバタしていて、連絡できなくて……。まあ、結婚と言うか、籍は入れていないんだけど」 「え、そうなの? じゃあ、『事実婚』ってこと?」 「うん。式を挙げるつもりもないし」  『事実婚』。  これは半分本当で、半分嘘。  親友である彼女にすぐに報告できなかったのも、厄介な事情があるからだ。   麻衣はよほど驚いたらしく、テーブルの向こうから身を乗り出して問い詰めてくる。 「相手はどこの人よ? 二ヶ月前に会った時も、先月電話した時も、星那に恋愛の話なんてなかったじゃない」 「えっと……。実は、半年前から婚活アプリをやってて……。趣味がけっこう被ってる人でさ、あっという間に意気投合したんだ」  あらかじめ考えてきた『嘘』を、ドキドキしながら口にする。 「えー、そうだったの。付き合いだしたのは、いつから?」 「よ、四ヶ月前……かな」 「ええー! なんでずっと黙ってたのよ」  私は顔の前で手を合わせ、頭を下げた。 「本当に、ごめん! 『もし、別れちゃったら』って思ったら、なかなか言い出せなくて……」 「ああ……。そう言えば星那、半年前に彼氏と別れたばかりだもんね……」
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