12日目『ジャズマン(JAZZ MAN)』/サザン 9th Sg

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12日目『ジャズマン(JAZZ MAN)』/サザン 9th Sg

⭐️収録曲:  1.ジャズマン(JAZZ MAN)  2.ひょうたんからこま ⭐️発売日:1980年6月21日 ⭐️最高位:32位 ⭐️売上枚数:5万枚 サザンの当時のスケジュールの厳しさを物語るシングルが、この『ジャズマン』ではないでしょうか?公約してしまった毎月リリースの“ファイブ・ロック・ショー”は、スケジュール的に苛酷なモノだったに違いありません。 結果的に、アルバム『タイニイ・バブルス』を挟む形となってしまったとはいえ、順調に毎月21日にサザンのシングルとアルバムが世に出ていたのです。今にして考えるとスゴイ話です。 しかし、締切に追われる中でどれほど作品の吟味が出来ていたのでしょうか? テレビ出演で大忙しだった78年~79年のサザンのスケジュールの追い込まれ方とは、どこか違う気がします。 メディア出演多忙時の忙しさは半端じゃなかったとメンバーも語っていますし、桑田さんも『気分しだいで責めないで』や『10ナンバーズ・からっと』が納得できずに世に出してしまった“駄作”と酷評しているのですが、むしろ、そちらの“駄作”の方が“同じ過密スケジュールの中だとしても、魅力と勢いがある気がします。 思うに、素晴らしい楽曲を生み出すという事は、いかに自分達が注目を集めているか、いかに期待されているかという事を肌で感じる事ではないでしょうか? 事実、99年の歌舞伎町シークレットライブでの、ファンとのコミュニケーション的ライブを行ったことで生まれる『TSUNAMI』という大ヒット作もあるわけですから、いかに、ライブやメディア出演が“PR”の枠を超えた存在であるかという事を認識しなければ、前進はできないのかもしれません。 このシングル、大変失礼ではありますが、一言で言うと“幸が薄い”・・・。つまり、シングルの本懐である"売れる要素"が無いのです。 楽曲としてのポテンシャルは間違いなく素晴らしいです。サザンがこれまで、アルバム曲で度々披露してきたミドルテンポの小気味良さを存分に発揮し、心地よくて耳馴染みも良い佳曲です。ジャズと冠するからには、やはりスウィングジャズの要素もあり、アレンジャーに八木正生氏を迎えて、翌年のアルバム『ステレオ太陽族』を見据えたかのような挑戦曲とも言えます。 しかしながら、シングルのA面曲として、今一歩な感は否めないと思います。本当に余計なお世話かもしれませんが、前年までのサザンの華やかなシングルA面曲の域にまでは達していないのではと思ってしまいます。『ジャズマン』を歌番組で、ヒット曲として披露している青写真を描く事ができません(もとより、メディア活動休止宣言中ですが)。"聴かせる曲"に違いないのですが、きっと、アルバム曲として、輝く曲なのです。もっと言えば、アルバム『タイニイ・バブルス』の『TO YOU』と入れ替えてリリースしたほうが、正解だったのではないか、と考えてしまいます。 ミュージシャンが職人気質として届けたい"作品性"と、世間が求める"大衆性"が理想的な掛け算になった時に、流行歌と呼べるヒット曲になります。本人達が、いくら手応えのある曲を作ったとしても、それが世間の求めるものでなければ、ヒット曲は生まれません。たまに、そんな定説を覆す革新曲もありますが、極めて稀なものです。 スタジオにこもり、音楽と向き合う時間が増えた事によって、スタジオの外でサザンが出てくるのを待ち構えているファンとの間に、多少のズレが出来てきた時期が80年から始まります。いわゆる"低迷期"です。 “期待に応えてばかりじゃつまらないし、自分達の音楽を楽しみたいから、みんなついてきて” そういった発信は、多様性を増した現代の音楽シーンにおいては発展的な方針に捉えられますが、大衆性が指標の大部分であった当時、そして、それを武器にしてきたサザンにとっては落とし穴にもなりうるのです・・・。 “ファイブ・ロック・ショー”は、音楽的水準の向上というプラス面はあったにしろ、全体としては“一歩の遅れ”――チャンスを逃し、出遅れた感はありました。それを取り戻すために随分、遠回りをしてしまったのでは?とも考えてしまいます。 その一方で、『勝手にシンドバッド』から続く異常なペースで飛ばし過ぎてしまうと、もしかしたら40年以上も鮮度を保てなかったのでは?とも。 サザンが、商業的な面や世間の評価として、良くも悪くも波があったのは、ある意味、長年第一線で活躍する長距離歌手の宿命なのかもしれません。 『ジャズマン』とは一体何だったのか? この曲を聴き直すたびに、『ジャズマン』には桑田さんの当時の心境が散りばめられている気がします。 〈思い思いの気分でやれたら〉 〈言葉なんて無くっても心で感じて〉 実は、この曲はもしかしたら世間とファンに向けたメッセージソングだったのかもしれません。 最後に一節を拝借して締めたいと思います。 〈そんなサザンに愛を!〉
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