13日目『わすれじのレイド・バック』/サザン 10th Sg

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13日目『わすれじのレイド・バック』/サザン 10th Sg

⭐️収録曲:  1.わすれじのレイド・バック  2.FIVE ROCK SHOW ⭐️発売日:1980年7月21日 ⭐️最高位:28位 ⭐️売上枚数:4万枚 シングルを毎月連続でリリースする“ファイブ・ロック・ショー”。そのトリを飾るのが、この『わすれじのレイド・バック』です。 B面の、その名もズバリ『FIVE ROCK SHOW』と、ひっくるめた1枚として、このシングルが初期の中で、個人的に一番好きなシングルです。 この曲を聴く度に、サザンのメンバーの一体感を感じます。カントリー調のバラードという、サザンとしては今までにない試みのシングルなのですが、どこかリラックスした感じで、肩に力が入っていたデビュー直後の曲と比較しても大人になったなぁ~サザン・・・とも思わせるのです。 そして、この曲の最大の核心は、何と言っても、クレジットに込められていると言ってもいいでしょう。 <桑田佳祐:Vocal、Guitar>,<大森隆志:Guitar、Chourus>といつもどおりのクレジットが並ぶ中、その下を見てみると<原由子:Mind>と書かれています。 当時、レコーディングの際、原さんは体調不良のため、このシングルの制作に参加できませんでした。毎月リリースという制限があったため、やむを得ず、キーボードは、代役の奥慶一氏が参加することとなりました。 メンバーの優しい気遣い。それは何の事情も知らない買い手の側からすればなんのことやら?という話なのですが、当人達にしか分からない暗号のようなモノで余計にグッとくるモノがあるでしょう。 サザンの中で、いかに、原坊が、そして、メンバー一人一人が特別な存在として気持ちを通じ合わせているか、それを確認できただけでも、このシングルは、とても、意味の深いシングルと言えます。 そんなエピソードに加えて、ラストのメンバーの大合唱も、メンバーの心の通じ合いを意識しているかのようです。アルバムも3枚リリースし、シングルも10枚目、“ファイブ・ロック・ショー”も最後の1枚となった。ということで、サザンは、何かこのシングルに節目の思いを込めていたのかもしれません。 A面は成長したサザンを見せつけるバラード。B面は、まるでビートルズの〝アビーロード・メドレー〟のようなコミカルソング。もしかしら、このシングルで、サザンは、自らの学生バンドの残り香を完全に断ち切らせ、同時に青春のいい意味で、いい加減なハチャメチャの熱量を閉じ込めたのではないでしょうか? そう考えると『わすれじのレイド・バック』が卒業ソングのように聴こえてきます。 事実、この頃を境に、81年に入ると今までとは、まるでガラッと変わったかのようなサウンドを習得していきます。八木正生氏を全面的にアレンジャーとして迎え入れ、一皮むけた大人のサウンドを身につけていくのです。 サザンは、本能的にその変革を知っていたのでしょうか?この曲のラストの合唱は、さながら『蛍の光』のメロディにも似ています。 サザンが、この先も果てしない活動を続けていくであろうことを本能的に悟り、自らの運命を肯定するように響く“レイド・バック”。 サザンが、世間との距離感と自身の立ち位置を見つけるのはこの先のことですが、このシングルからは、メンバーの団結宣言と未来への覚悟が見受けられ、とても興味深いのです。
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