15日目『Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)』/サザン 12th Sg

1/1
前へ
/106ページ
次へ

15日目『Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)』/サザン 12th Sg

⭐️収録曲:  1.Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)  2.朝方ムーンライト ⭐️発売日:1981年6月21日 ⭐️最高位:49位 ⭐️売上枚数:4万枚 “ファイブ・ロック・ショー”がひと段落つき、サザンもいよいよメディア復帰するのかな、と思いきや、まだまだスタジオワークを続行する彼ら。次の年の大爆発を知ってか知らずか、81年は、サザンにとって“挑戦”の年になった、という印象です。 その年を象徴するのが、アルバム『ステレオ太陽族』であり、この、実に挑戦的なシングル『Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)』です。 『ステレオ太陽族』というアルバム自体、あまりにもコアな楽曲が多く、大衆性というモノをあまり寄せ付けない独自性を持った仕上がりとなりました。しかしながら、画期的で新鮮なアルバムとしてライトファンを中心に評価されると、当然のように堅実なヒットを記録しました。 そんなアルバムの先行シングルとしてリリースされたのが、このシングルでもあるので、やはりマニアックな雰囲気はあります。それ故に、セールス面では貧乏くじを引いてしまったかもしれません。ただ、そんな言葉で片付けてしまうにはあまりにも勿体無い、サザン史には重要なシングルとなります。この先、ライブの定番として定着していく所以が、この曲の“しっかりとした音楽性”にあります。表面的には、わりと身軽で、サラリとしたロックテイストのナンバーですが、改めて聴いてみると実にディープです。 デビューから3年を経過していましたが、その時間以上の成長を遂げているように聴こえます。 サザンのメンバー一人一人を活かした、本格的なバンド形態を見せつけています。 “ファイブ・ロック・ショー”の後であり、結構“何でもアリ”的な流れがきているのですが、そんな想像を遥かに飛び越えて、サザンは次なるステージへの準備を企てていることを肌で感じます。 B面の『朝方ムーンライト』をA面と同じテンションで聴いていると、気持ちのいい違和感と期待感をビンビンに感じます。この2曲に、かつてない懐の深さを感じてならないのです。 “前兆”というものは、実際、事態が起こった後に認定されるものですが、82年の大当たりには、やはり、このシングルから、すでに“前兆”があったのではないでしょうか?しかも、サザンもある程度、その事を予期していたのでは? それがうかがえるものとして、このシングルのジャケットは実に興味深いです。 今まで、サザンのシングルジャケットは、メンバーの映っているものは6人全員が多少なり差はあるものの、それぞれ均等に映っています。 ところが、この『Big Star Blues』では桑田さん一人しか映っていません。 しかも、学ランを着て、お茶目なポーズをとっています。これは、明らかにメディアを意識した挑戦的なジャケットです。オフザケをやらせたら右に出るものはいない桑田さんのキャラクターを全面に押し出してきたのです。なぜ、そんな必要性があったのか?ここにキーワードが実はあったのです。 82年の大ヒット“チャコ”が、明らかに大衆に受け入れられやすかったのは、メディアの使い方が実に巧みだったからです。 楽曲の良さはもちろんですが、TVで様々なコスプレをして歌ったり、歌い方をトシちゃんの真似をしてみたり、とにかく120%以上のコミックさとキャッチーさを、世間に上手く伝えられたからです。 そんなメディアへの非常に上手いアプローチと、外部とバンドの温度差など“ファイブ・ロック・ショー”の時にちょっと見失っていた(あえて避けていた?)感覚を、もう一度、“シンドバッド”の頃のように、よみがえらせようとする“微動”が、このジャケットからうかがえるのです。 しかし、残念な事に、それを見抜けた人は、ほとんどいなかったのかもしれません。それは、アルバム『ステレオ太陽族』のディープさもありますが、楽曲の完成度というモノも多少なりとも関係しているかもしれません。 マニアックな方向に突き進んでいくサザンに踏み込めないリスナーも決して少なくないハズであったから・・・。 しかしながら、サザンはすでに、大衆性を持った楽曲を見極め、生み出し、いかに披露するかの術をもう十二分に備えていました。 前兆というモノは極めて特異な現象でなければなりません。メッセージというものは、送り手がその意味を直接伝えるものではなく、受け手が感じ取るものであり、そのジレンマに悩まされることはいつの時代もあります。 それは、ある意味、“ビッグスターの悲劇”ではないでしょうか。(お後がよろしいようで。。)
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加