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17日目『栞のテーマ』/サザン 13th Sg
⭐️収録曲:
1.栞のテーマ
2.My Foreplay Music
⭐️発売日:1981年9月21日
⭐️最高位:35位
⭐️売上枚数:5万枚
アルバム『ステレオ太陽族』が、結構コアなアルバムである事は前回も触れましたが、そのアルバムのラストをしめくくるのが、もの凄いキャッチ―で心地よいスタンダードバラードであるのは、なんとも驚きです。そのバラードこそシングルにリカットされた『栞のテーマ』です。
サザンバラードの温かさを、ここまで実感できる曲はほかにはないでしょう。ハチロクリズムのピアノが印象的で、ほのぼのとしたアレンジなのに聴けば聴くほど切なくなってしまう。そんなノスタルジックさは、この先、どんどん磨かれていくのですが、原石としてはあまりにも完成されているから凄いのです。
究極の名曲です。親しみやすさを追求したバラードという点においてサザンの最高傑作のひとつと言えます。
この曲が、世間的に広く受け入れられた事から、サザンはある程度、次なるアプローチを決めていたのかもしれません。『栞のテーマ』の“渚”が“湘南海岸”であるというイメージはすでに刷り込み的に人々の頭の中にはありました。
そうだ!サザンと言えば“夏”、“茅ヶ崎”、“江ノ島”じゃないか!というファンの心理をがっちりとキャッチしたのです。“サザン=夏”という図式が、再び形作られていくのです。
“サザンがサマーソングをリリースすれば絶対ヒットする”という神話はすでに定説に近くなっていたのかもしれません。
とにもかくにも『栞のテーマ』で、ある種のアプローチ方法や、黄金パターンというノウハウがよみがえってきたのではないでしょうか?
“太陽の下、海の近くで”が、サザンソングの原点であることを今さら確認したような、このシングルが“待たせてゴメンね”というメッセージに聞こえてしょうがないのです。
80年~81年の活動の中には、どこか「学生バンドから脱却したい」というイメージがありました。別にそんな欲求は持たずとも、もうすでに彼らを“学生バンド”と評する人はほとんどいなくなっていました。
ですが、そんな空気を読めるだけのプロの余裕がまだ無かったのか、がむしゃらに道を開拓しようとしていきます。そんな若さも時には必要ですが、時にその若さゆえ周りの声を閉ざし、己の本能のままに突き進もうとした――それが80年の“ファイブ・ロック・ショー”だったのではないでしょうか?
年が変われば、心構えも変わるのでしょうか?81年には映画音楽への挑戦など、非常に前向きな動きを見せ始めます。
“バンドとしての上達もいいが、世の中へ発信するモノとして表現力の面も上達したい”なんて、『ステレオ太陽族』を聴いているとそう思わされます。
“どうしたら、世間に受け入れられるのか?”
という前向きな課題を見つけたサザンは、『栞のテーマ』という最も理想的な曲を見つけます。
忘れていたモノを思い出させるようなサザンバラードの王道は、やがて彼らを結論に導くのです。
「よし!これでメディアに向かって行こう!」
始まりの合図はすでに鳴っていました。82年初頭のツアーで、桑田さんがメディア復帰宣言するよりも先に、このシングルが何かを告げているような気がします。
「ひと頃のあなたに戻る♪」――そう、確かに戻ってくるのです。あのデビュー当時の熱狂と一回りもスケールを広げた存在として――
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