1日目『勝手にシンドバッド』/サザン 1st Sg

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1日目『勝手にシンドバッド』/サザン 1st Sg

⭐️収録曲:  1.勝手にシンドバッド  2.当って砕けろ ⭐️発売日:1978年6月25日 ⭐️最高位:3位 ⭐️売上枚数: 51万枚 サザンオールスターズの記念すべきデビュー曲にして、あまりにも“神格化”されてしまったこの『勝手にシンドバッド』ですが、それ故に、この曲を落ち着いて評価する機会が少なく何か寂しい気がしてなりません。 もともとは、学生バンドの記念のつもりで、安易な気持ちでリリースしたシングルだったようで、革新的な曲を作って音楽業界のトップに立ってやろうという野心は無かったのかもしれません。 それが、センセーショナルな楽曲として世に登場し、大ヒットを記録し、“シンドバッド”は、異端児サザンの代名詞となりました。 ブラウン管越しにエネルギッシュにジョギングパンツ姿の若者が熱唱する、その第一印象から、“唯一無二のキワモノ"的なイメージが世間には浸透していきました。 2003年にはサザンの25周年を祝う顔として“スペシャルBOX”なるモノが発売され、それがなんとチャート初登場1位を獲得する快挙を達成してしまってからは、"別格の神曲"としてのイメージ化が加速していったような気がします。 そして、デビュー40周年となった2018年末の"平成最後の"紅白歌合戦では、番組の枠を超えた、大トリ後の特別出演で、壮大なフィナーレ曲として、ユーミンとの共演も果たした伝説的なパフォーマンスを演出します。これにて、お茶の間に国民的バンドのサザンを象徴する代表曲として、再び、その"神曲"イメージを確固たるものとしました。 あまりにも出来過ぎているデビュー曲は、その完成度の高さゆえ年を経るにつれ、“サザンの長老”として“サザンソング”の源となり、いまさら語らず的な、ある種曲にとって不幸な道を辿っていく気がしてならないと私は危機感を覚えます。 というわけで、この名曲を再び聴いてみることにしました。すると、不思議なもので・・・サザンの曲というのは、全て共通して言えますが、聴けば聴くほど曲の深みが増してきます。そして、結論が出ました。この曲は、やっぱり本当は切なくてロマンチックなバラードなんだ、と。 元来、この曲がまだ新宿ロフトなる聖地を拠点とし始めたサザン草創期のステージレパートリーだった頃、今、現在のイメージとは対をなすテンポの遅い曲だったというのは、わりと有名な話。(桑田さんは『恋のバカンス』のような歌謡曲を目指したとも。。) 斉藤ノブさん(夏木マリさんと結婚された・・・)のアレンジにより、現在の『勝手にシンドバッド』となりましたが、そんなアレンジの、サンバ、ホイッスル、大合唱のイントロ・・・それらの要素を取り払った時、“裸のシンドバッド”が見えてきます。 純粋にメロディーと詞を受け止めると、私には勝手にシンドバッドがバラードにしか聴こえません。意味不明と言われるハチャメチャな歌詞もサザンバラードの甘酸っぱい切ない歌詞と大して差がない気がします。いや同種、全く同じです。 「砂まじりの茅ヶ崎 人も波も消えて」「さっきまで俺一人 あんた思い出してた時」切なさを抱えた男が浜辺でひとりきりで、たった一人愛した女性の事を想っている・・・。同時期のサザンバラードの原点とも言われている『恋はお熱く』とまるで同じ情景。 その後、果てしなく続き『メロディ』『真夏の果実』そして『TSUNAMI』へと受け継がれるあの情景では? 「胸さわぎの腰つき」なんて、いかにもコミックバンド要素の歌詞も、少しも奇抜ではなく、『匂艶THE NIGHT CLUB』のやるせない男女を思い出して胸がキュンとなってしまうのは私だけでしょうか。 「今何時?」「そうねだいたいね」の掛け合いも、デートの別れ際、お互いの心の糸がほどけそうになるのを知ってか知らずか、無意識に繰り返される切ない問答。「まだ早い」で、男の本音が告げられますが彼女には届いたのでしょうか・・・ とにかく「ラララー」で始まり「ラララー」で終わる、かくも悲しき青春の1ページは、恋愛の普遍性を切なく永遠に語りかけています。 この曲は、アレンジ次第で“泣きのバラード”になってしまう可能性も少なからず秘めており、それこそ、桑田さんの本懐では?と、私は、勝手に勘繰ります。 こんな“読解力”を要する(?)シングルをデビュー曲に引っさげたサザンオールスターズ。学生アマチュアバンドの延長線上にいた彼らを、前例の無い日本初の"国民的バンド"に至る道へと導いたのは、彼らを発掘した当時のビクターの高垣氏と、彼らをこの曲で、テレビという媒体を通じてセンセーショナルに"デビューさせた"アミューズの現会長 大里氏です。その功績は、ビートルズを見出し、世に送り出したブライアン・エプスタインとジョージ・マーティンに並ぶ歴史的な賞賛に値するものであると思っています。 そんな伝説の第一歩となったシングル『勝手にシンドバッド』発売日の1978年6月25日ーー彼らに仕事は一本も入っていませんでした。。。 恐るべしアミューズ。。 (ちなみに、『勝手にシンドバッド』の同級生は、MISIA、椎名林檎、浜崎あゆみ・・・6月25日の時点では産まれていませんが(^_^;))
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