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18日目『チャコの海岸物語』/サザン 14th Sg
⭐️収録曲:
1.チャコの海岸物語
2.翔(SHOW)〜鼓動のプレゼント
⭐️発売日:1982年1月21日
⭐️最高位:2位
⭐️売上枚数:58万枚
1980年、メディア活動の休業宣言をしてから2年間、サザンの音楽性は幅を広げたものの、パフォーマンスの視覚的な部分が少なくなり、ファンにとっては実に寂しい期間だったことでしょう。そんな2年間を充電期間と呼ぶなら、82年は蓄積されたものが一気に爆発した年と言えます。
ありとあらゆる音楽番組に出演し、ついには、紅白にまで出場。アルバムも特大ヒット、と華々しい1982年でした。しかし、何と言っても、その起爆剤となったのが、超強力な個性を放つ日本歌謡史に残る名作中の名作『チャコの海岸物語』でしょう。
たった一曲が、サザンの活動の流れを変え、今日まで、そのサザンのイメージをさらなる絶対的バンドに変えてしまったのです。
アイドル超全盛期の82年、バンドが、こんなキャッチーで、ド歌謡要素満載のシングルを大ヒットさせるなんて誰が予期したのでしょうか?
私の持論としては、この曲の成功がなければ、日本の音楽シーンは、ものすごく味気のないモノになっていたのではと思います。
また、この曲で一躍、茅ヶ崎のシンボルにもなり、いまや日本一有名な岩とも言える“エボシ岩”を世に浸透させたのも偉大な功績です。
そんな湘南のイメージに憧れ、プロを目指した、同じく夏バンドTUBEも、もしかしたら、この曲が無ければ存在しなかったのでは?と思うのです。
様々な面に多大なる影響を残した“チャコ”なのですが、この曲の魅力について、やはり特筆すべきは桑田さんのエンターテイナーぶりでしょう。歌謡オマージュ的な楽曲に、当時のアイドルブームの頂点にいた“トシちゃん”を真似たボーカル。究極のパロディであり、究極のオリジナリティも持っている。
ある意味、皮肉たっぷりな楽曲であり、聴き手も許容範囲で、それを理解できる。さすがに、この年の紅白歌合戦で、この曲を披露した際の三波春夫パフォーマンスは、ヒンシュクを買ってしまいましたが、サザンは、今まで以上に客観的に活動ができる余裕が備わってきたように感じます。
“ファイブ・ロック・ショー”の頃、自らのオリジナリティを追求するため、ある程度、大衆性に見切りをつけていた部分がありました。その後、だんだん外へ外へと目を向け始め、ようやく“復活宣言”とともに、シングルの“チャコ”をヒットさせました。
“復帰第一作”が、あまりにも大衆向けなシングルであったので、様々なメディアが飛びつきました。その直後に、桑田さんと原さんの結婚というもの凄い"おいしい"ネタまで出てきて、一躍、サザンは、メディアというステージで再び脚光を浴びることとなります。
結婚のタイミングもさすがであるし、“チャコ”のパフォーマンスも、並のバンドとは思えません。
意識されたり、期待されると、良くも悪くも物事は、大きく変わってゆきます。
サザンは、その成功例であり、まさに理想的な要素を手に入れることもできました。
自由なバンドに、メディアやファンのいわゆる、外の目と内なる表現力をバランスよく調整できるスキルが備われば、まさに無双状態でしょう。そんな超理想的なバンドは、日本では、サザンが初めてだと思います。
“チャコ”以前の“シンドバッド”や“エリー”の下地もサザンを形作るには欠かせない存在ですが、“チャコ”の出現は、【サザンがサザンである】という最も、今、我々が持っている馴染み深いイメージを最初に植え付けたのではないでしょうか?
この先、どんなバンドが現れようとも、サザンオールスターズを超えるバンドは現れないかもしれませんーーサザンに“チャコ”という心強い存在がある限り。
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