19日目『匂艶THE NIGHT CLUB』/サザン 15th Sg

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19日目『匂艶THE NIGHT CLUB』/サザン 15th Sg

⭐️収録曲:  1.匂艶THE NIGHT CLUB  2.走れ!トーキョー・タウン ⭐️発売日:1982年5月21日 ⭐️最高位:8位 ⭐️売上枚数:29万枚 1982年は、サザンにとって“名曲の宝庫”です。『チャコの海岸物語』に始まり、『夏をあきらめて』『Oh!クラウディア』そして、『Ya Ya』など、後世に残る名曲が次々に誕生しました。 とりわけ、バラードばかりなのですが、忘れてならないのが、このシングル『匂艶THE NIGHT CLUB』です。個人的に、この曲はサザンの魅力を存分に堪能できる名曲だと思います。圧倒的なアレンジと曲の構成、ボーカル、そのすべてにおいて、輝きの極みを魅せています。 ダントツに素晴らしいアレンジは、サザンと一心同体のチームプレイを見せる、この頃のサザン最大のキーパーソン八木正夫さん。そして、そのアレンジに最大限の呼応を見せる、桑田さんの気持ちを込めた情熱的歌唱。さらに、少しアダルト(エッチ)で切ない歌詞も格別です。 一人の男が、クラブで目にした女性に一目惚れしてしまうーー。しかし、彼女は、彼が当然知るよしもない、過去を背負っていたーー。踏み込めない影に、もどかしくて、切なくて、ただ踊るだけしかできない。 男と女の言葉では表現できない愛のカタチと微妙な関係をナイトクラブという舞台で、激しくも切ない歌謡メロディーと、ラテンテイストで見事に表現しているのです。 『勝手にシンドバッド』の中では、そんな表現の真意は曲全体においての隠し味としていましたが、この曲では、メインディッシュに押し出してきます。だから、とても切ないのです。 サザンというバンドは、こういうノスタルジックな雰囲気を、バラードにも、こんなラテンナンバーでも盛り込んでくる事が非常に上手いのです。そして、こういう要素は、デビューから現在まで、全く変わらない姿勢で存在しています。それが、サザンのサザンたる由縁の要素なのです。 『C調言葉』や『栞のテーマ』で見せた、男と女の、ちょっと眩しくて、小粋な恋の駆け引きの感じを、同じイメージで、全くタイプの違う曲に乗せることができるのです。こういうバンドは、なかなかいないのかもしれません。 もうひとつ、このシングルには特筆すべき点があります。B面の『走れ!トーキョー・タウン』なのですが、サザンとしては初めての試みであるシンセサイザーを導入しています。82年という年は、サザンにとって、変革元年とも言える年です。 それが、花開くのは、翌年以降からですが、生身のロックというバンドグルーヴが、80年代特有のシンセ類を中心としたアレンジに取って代わる様子が、段々と見え始めてきます。 とはいえ、この曲も、初めての試みとしては、なかなかの出来映えなのです。 1枚のシングルの中に、1曲は、まさにサザンお得意の黄金パターンとも言えるラテン歌謡曲。そして、もう1曲は、実験的で未来を見据えた時代感覚的な曲。両極が共存する異色のシングルは、サザンが新たな道を歩み出すことを何より物語っていました。
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