21日目『Ya Ya(あの時代を忘れない)』/サザン 16th Sg

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21日目『Ya Ya(あの時代を忘れない)』/サザン 16th Sg

⭐️収録曲:  1.Ya Ya(あの時代を忘れない)  2.シャッポ ⭐️発売日:1982年10月5日 ⭐️最高位:10位 ⭐️売上枚数:33万枚 82年という年は、サザンにとってのターニングポイントの年となりました。そんな年のしめくくりが、このシングル『YaYa(あの時代を忘れない)』のリリース。そして、カセットアルバムの『バラッド』のリリースです。 サザンのカセットコンピアルバムは、当時、頻繁にリリースされていたのですが、この『バラッド』は、バラードに絞る、実に画期的な選曲であるため、大ヒットを飛ばし、カセット作品としても、今日まで日本音楽史上1位の売り上げ記録を保ち続けています。 そして、その後もシリーズ化されていくこととなりますが、そんなアルバムにも収録されている『YaYa(あの時代を忘れない)』は、当時のサザンとしては珍しく、秋をイメージしたバラードとなっています。 “涙のチャペル”“ひとり身のキャンパス”など、曲の舞台は桑田さんらメンバーが学生時代を過ごした青山学院大学をイメージしています。“Better Days”なんて、彼らが在籍していたサークルの名前がでてくるところも非常に私的なものになっています。 今まで、サザンのバラードと言うと、一組の男女が登場するラブストーリーなのですが(たいがい失恋の・・・)この曲にいたっては、ビートルズの『In My Life』を意識したかのようなメモリーソング的な意味合いが強いです。 そんな曲の中では恋愛も非常に大きな事象の中の一部にすぎません。当時としては、珍しいバラードなのですが、その後『夕陽に別れを告げて』『せつない胸に風が吹いてた』そして『素敵な夢を叶えましょう』など一定の期間を経て、このテの曲は登場します。実はデビュー曲だって聴き方によってはそんな見方もあります。 この曲が、プライベート的な要素を強く放っているのは、もしかしたら必然的なことだったのかもしれません。83年以降、サザンはバンドの生音から脱却し、デジタルサウンドへのアプローチを開始します。時代の流れだったのかもしれません。 時代の最前線を走る道を選んだサザンにとっては、避けて通れない道だったのです。サザンが予期していた未来は、もしかしたら、もうすでにバンド形態など無くなってしまっているのかもしれません。 もう生身の人間が試行錯誤して曲作りをするのではなく、コンピューターで、あらゆる音をアレンジして作り上げていくのではないか? そんな行く末を感じ取っていたのかもしれません。 そんな時に、フッと学生時代、“互いにギターを鳴らしては、仲間と解り合えてた”、なんて懐かしいサークルの思い出が脳裏を駆け巡ったのではないでしょうか? これまでも、おそらくそんな思い出を曲にしたい衝動はあったハズです。 しかし、デジタルが主流となっていく今、この瞬間に、必要とされて、この曲を世に生み落とそうとしたのではないのでしょうか? サザンも、5年目という節目の時期であり、その時期にリリースされたのも運命的なモノを感じます。 その後、デジタル全盛期となる85年に『夕陽に別れを告げて』、小林武史氏をプロデューサーに迎え、外部ミュージシャンを頻繁にレコーディングに招くようになった90年~93年に『稲村ジェーン』や『せつない胸に風が吹いてた』があり、サザンがある意味、デジタルロックに重きを置き始めてきた97年~98年に『素敵な夢を叶えましょう』があるなど、サザンがサザンらしさから一時的に脱却しようと新しい道を選んだ時に、このようなノスタルジックな曲が登場するのは単なる偶然なのでしょうか?(安定した現在に至ると少なくなります。) 「あの時代を忘れない」というタイトルは、何か、サザンの中にある決意を感じさせてくれます。音楽を、大好きな仲間達と“生身”で楽しんでいた「あの時代を忘れない」という決意のように感じるのです。
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