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23日目『EMANON』/サザン 18th Sg
⭐️収録曲:
1.EMANON
2.ALL STAR'S JUNGO
⭐️発売日:1983年7月5日
⭐️最高位:24位
⭐️売上枚数:7万枚
83年のサザンは、果たして前年のように大衆性を追求していたのでしょうか?アルバム『綺麗』を中心としてまわる83年から、サザンは本当の意味で時代の先頭を走るバンドとしての自覚を得たのではないでしょうか。
1978年、デビュー曲の思わぬ大ヒットにして、時の人、異端児と呼ばれたサザン。学生バンドのノリから次第に、自らの音楽性を広げたいという野心を抱くようになり、“メディア活動休業宣言”とともにスタジオワークに専念しました。
その結果の“ファイブロックショー”が、音楽性の幅をサザンに与えたのと引き換えに、世間からのサザンの大衆性を失わせました。もし、あのまま大衆的なヒット曲が無ければ、凋落していったのかもしれません。
そんなサザンの起死回生とも言える『チャコの海岸物語』の大ヒットは、“サザン”という固有名詞を人々の心に刻み、サザンにこれ以上ない自信を与えたと思います。
それを踏まえて迎えた83年は、折しも、デジタルアレンジのニューウェーブが世界を席巻し始めた頃だったのです。
新たに出現したデジタルサウンドを我が物にしようとサザンは苦闘します。その音作りのこだわりと格闘の証が作品性を重視した楽曲の増加に繋がったのでしょう。
そこには、“ファイブロックショー”の頃のような、メディアを避け、対峙する(?)開き直りはありません。あくまでも、音楽に本当の意味でメンバーが没頭した高水準の音作りがなされていたのでしょう。(もともと音作り志向の高いバンドですが。。。)
だから、大衆性のある曲は、この年非常に少ないです。しょうがないのです。派手な曲もありません。その変わり、時を経るほどに評価が変わらない、さらに評価の高くなる曲ばかりです。
『マチルダBABY』、『かしの樹の下で』『旅姿六人衆』『NEVER FALL IN LOVE AGAIN』『そんなヒロシに騙されて』などなど、いままでの生身のバンドグルーヴの良い面、デジタルグルーヴの新しい面を、要所、要所で慎重に選ぶ音作りは見事です。
そんな深い曲ばかりの83年を代表するシングル曲『EMANON』。確かに一聴すれば、派手さはありません。もしも、アルバム『綺麗』からリードシングルを選ぶなら、前出したような曲の中によりキャッチーな曲もあったかもしれません。
敢えてサザンがこの曲を選んだのは、これまで以上にサザンが成長した証を世間に提示したかったのかもしれません。
“シンドバッド”の頃の学生バンドのノリは、ほとんど見当たりません。
“エリー”ですら、熱量で歌われたバラードなのだと感じるほどに、『EMANON』は冷静的なバラードです。
しかし、冷静な中にも情熱はあります。それは青春の熱量ではなく、大人の火遊びのような一歩、段階を進めたような印象があります。頭脳的で、クールで、理性な中に、愛情を込められる、ちょっとドキッとした危険な一面を秘めています。
いつの間にサザンはこんなに大人になったのかしら?それを発見したころ、改めて、人はサザンに恋に落ちるのです。洗練され美しくなったサウンドに耳を奪われるのです。
人の成長が、思春期の頃から成人の頃の5年間とすれば、やはり、サザンの成長も5年目のこの年に、このシングルのジャケ写の美しい芍薬のようなサザンの音楽性という花は見事に開花したのです。
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