25日目『東京シャッフル』/サザン 19th Sg

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25日目『東京シャッフル』/サザン 19th Sg

⭐️収録曲:  1.東京シャッフル  2.Still I Love You ⭐️発売日:1983年11月5日 ⭐️最高位:23位 ⭐️売上枚数:12万枚 サザンというバンドは、実に“同調”というものを嫌う傾向があります。82年にリリースした3枚のシングルのそのどれもが三者三様の曲だったように、83年にリリースされたシングルを見るだけでも、またも三者三様なのです。 ロック路線の『ボディ・スペシャルⅡ』、バラード路線の『EMANON』そして、このシングル『東京シャッフル』は実にマニアックな歌謡路線なのです。 サザンの楽曲について、歌謡曲的要素がうかがいしれる曲は、これまでいくつもありました。しかし、これほどまでに巧みに取り組んだ曲は初めてではないでしょうか?私の持論として、桑田さんのセンスはそれほど歌謡曲に偏ったものでは無かったのではないでしょうか? 桑田さんの本質は、デビュー時から、どちらかと言うとややロック寄りなのかもしれません。デビュー当時のサザンでは『東京シャッフル』は生まれなかったのではと思うのです。 では、ナニが、桑田さんの中に眠る歌謡曲魂を呼び起こしたのか? それは、ある一人の方の影響かもしれません。そう、今は亡き八木正生氏ではないでしょうか。 八木氏が、サザンのアレンジに本格的に参加したのが、アルバム『タイニイ・バブルス』の頃です。彼がアレンジを手掛けた曲は、『Hey!Ryudo!』『私はピアノ』・・・などなどですが、その楽曲の一曲一曲が実に桑田さんの歌謡センスを上手く引き出しているのです。 そんな、八木氏のアレンジに触発されたのか、桑田さんのそれ以降の楽曲は、実に歌謡曲系の比重が高くなっていきます――。アルバム『ステレオ太陽族』は、まさにその象徴のようなアルバムであり、八木節全開のコアなアルバムに仕上がっています。 そして、ビッグヒットシングルの『チャコの海岸物語』。これがピークなのかと思いきや『匂艶THE NIGHT CLUB』、年が変わり、アルバム『綺麗』、そして『東京シャッフル』へと、その要素は、ますます濃くなっていくのです。 しかし、今にして思えばやはり82年の“チャコ”がピークだったのでは・・・?83年に次第にデジタルサウンドによる曲作りの度合いが増えてきて、どうもアンバランスになった気もします。 『かしの樹の下で』の歌謡テイストのバックに流れるデジタル楽器の音が少しアンバランスさを感じさせます。その“ねじれ”が、この『東京シャッフル』にも存在するのです。 徐々に、比重を増していくデジタルサウンド。ノスタルジックでソフトな歌謡曲要素を生楽器で示していたサザンにとっては、変化を余儀なくされてしまうのは否めなかったのではないでしょうか。 リアルで尖がったデジタルサウンドを手にして、その代わりに、サザンは歌謡系サザンを引き出しにしまわなければならなかったのでは?と思います。 その後、ちょくちょく引き出しは、のぞかれますが、本格的に引き出しを開けて取り出したのはおよそ20年先の『HOTEL PACFIC』ではないでしょうか?時代がまわり回って一回転し、歌謡曲が逆に新しいものとなった頃です。 とにかく、より新しいモノを追求していくという果ての無い旅路のレールに乗ったサザンは、その後、加速度的に時代の先端を走らなければいけないという宿命に立ち向かって行きます。
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