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2日目『熱い胸さわぎ』/サザン 1st Al
⭐️収録曲:
1.勝手にシンドバッド
2.別れ話は最後に
3.当って砕けろ
4.恋はお熱く
5.茅ヶ崎に背を向けて
6.瞳の中にレインボウ
7.女呼んでブギ
8.レゲエに首ったけ
9.いとしのフィート
10.今宵あなたに
⭐️発売日:1978年8月25日
⭐️最高位:16位
⭐️売上枚数:10.1万枚
1978年6月25日ーーーシングル『勝手にシンドバッド』でデビューしたサザンオールスターズ。その第一歩を実際に目撃していたのは、当の本人達と関係者、学生時代から彼らを愛する同じ青山学院大学のサークル仲間、斎藤誠青年とその友達の友達くらい・・・。国民的バンドとして日本中の隅々津々浦々から、彼らを愛する何百万人のファンにその動向を注目される43年前のことでした――。
桑田佳祐、原由子、関口和之、松田弘、野沢秀行、大森隆志――6人の若者達は、学生バンドからプロへ――当時の若者が抱いていたひとつの夢を叶え、青春時代の“戦利品”として、レコードを残します。
先のことは分からない。ただ、今やりたい事だけをやって仲間の喜んでいる顔でも見ていられたら、それで良かったのかもしれません。そんな無邪気なデビューは、はからずも『勝手にシンドバッド』という、最大瞬間風速の追い風を生み出し、本人達の思惑とは遥かにかけ離れた遠い地へと、彼らを運んで行ったのです。
ハチャメチャなリズムとメチャクチャな歌詞
ジョギングシャツ姿で叫ぶように歌う暑苦しい若者達
前例のない規格外の歌とパフォーマンスを見せるバンドを、メディアが“コミックバンド”と、形容せざるを得なかったのは、無理からぬことでしょう。
その卓越した音楽性が評価されるには、『勝手にシンドバッド』という“勝負曲”は、あまりにも時代に“勝負”し過ぎていたのです。
〝キワモノ〟
〝一発屋〟
世間が求めたがる分かりやすいキャッチコピー
それが望むも望まざるも浸透していく中で、ある1枚の大変重要なレコードが発売されます。
1978年8月25日
1stアルバム『熱い胸さわぎ』のリリース
サザンオールスターズにとっての本当のデビューは、この時だったのかもしれません。
サザンオールスターズが、最初にして最もサザンオールスターズらしいアルバムを世に送り出したのです。
アマチュアバンドとして、湘南ロックンロールセンターから新宿ロフトを拠点としていたバンド草創期に、彼らがステージレパートリーとしていた数々の楽曲を1枚に詰め込んだアルバムがこの『熱い胸さわぎ』でした。
ステージで鍛え上げられた強靭なパワーと、学生バンドらしい青春の残り香を漂わせる楽曲群の魅力――
それゆえに、『熱い胸さわぎ』は、サザンオールスターズのデビュー盤でありながら、当時の、ステージングに明け暮れていたサザンの、まさに“ライブ盤”でもあるのかもしれません。ビートルズのデビューアルバム『プリーズプリーズミー』がそうであったように、サザンもまた“ライブバンド”として培った自信をファーストアルバムに込めたのです。
生身のバンドのエネルギーには理屈はありません。なんの思想もいりません。
ただただ、やりたいことをやる。歌いたいことを歌う。
そんな自由な思い切りの良さが、圧倒的なレンジの広がりを見せていく彼らの脅威の音楽性とことごとく結びついていきます――
『女呼んでブギ』と『今宵あなたに』
ヤマハのアマチュアバンドコンテスト「イーストウェスト」で〝勝負曲〟として歌われた、まったくタイプの違う2曲
『別れ話は最後に』
当初、デビュー曲として用意していた〝勝負曲〟の味わい深いミディアムバラード
『茅ヶ崎に背を向けて』
サザンオールスターズの最も古いレパートリーであるステージの〝勝負曲〟
ほかにも、名バラード『恋はお熱く』(収録曲中、唯一、メジャーデビュー後に作られた)、リトルフィートを意識した『いとしのフィート』、レゲエに挑んだ『レゲエに首ったけ』
そのどれもがハイライトであり、とても1枚のパッケージに収まっているとは信じがたいバリエーションに富んだ、新人バンドらしからぬ〝勝負曲〟ばかりなのです。
決して『勝手にシンドバッド』という1曲が“勝負”ではなく、彼らが挑む曲のすべてが“勝負”であり、そのあくなき情熱を耳と魂で感じさせる“熱い衝動”は、まさにタイトルの『熱い胸さわぎ』にふさわしいモノであるのだと、聴者に再認識させるのです。
このたった1枚の10曲40分間に、その後のサザンの40年もの月日に及ぶ華々しい活躍を予見させる要素がたっぷりと詰まっているのです。
2021年、この青春の熱気を、また違う時代の風の中で聴く時、寄り添う言葉は、きっと、『茅ヶ崎に背を向けて』の一節――「本当に今までありがとう」――ではないでしょうか
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