3日目『気分しだいで責めないで』/サザン 2nd Sg

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3日目『気分しだいで責めないで』/サザン 2nd Sg

⭐️収録曲:  1.気分しだいで責めないで  2.茅ヶ崎に背を向けて ⭐️発売日:1978年11月25日 ⭐️最高位:10位 ⭐️売上枚数: 27万枚 この曲は確かにヒットしました。ちょっと大人なロックテイストで、セクシャルかつハイテンションな桑田さんのボーカル、詞とメロディはいつ聴いても小気味イイ。 しかしながら、私にはこの曲の“不幸な生い立ち”のほうが興味深いのです。 ヒットしたと前述したのですが、その後、妙に引っ掛かるトコもなくて、そのクオリティに反して評価されない悲しき曲――。 私は、この曲を聴く度に「あなたは望まれて産まれた子じゃないの」という母親の声が聴こえてくる気がしてなりません。 そんな、どこぞの昼メロのような生い立ちを持ったこの『気分しだいで責めないで』がリリースされたのは、おりしも『勝手にシンドバッド』が旋風を巻き起こしていた頃でした。 「望まれて産まれた子じゃない」というのは何も根拠のないイメージではありません。事実として“シンドバッド”の奇抜なビジュアルと絡めたヒットから期待される次の展開――つまり“面白ロック第2弾”の声が、サザンを苦しめていたのです。 “シンドバッド”は“シンドバッド”・・・他の何ものでもありません。「シンドバッドのような曲を」と望む制作サイドの強要に反発はあったでしょう。だって“シンドバッド”自体、もしかしたらサザンにとって望んだ形では無いのかもしれないから――。 自信に満ちた最高のデビュー曲をコミックソングの枠に型取られ、「次なるコミックソングを」と言われてもムリなのではないか――。1stアルバム『熱い胸さわぎ』を聴けば、そんな事とうに分かっているはずなのですが、、 相変わらず、桑田さんは、スーパーマンの格好をして宙吊りにされながらベストテンで歌っているし、バラエティ番組にも誘われるし(進んでやっていた??)・・・その音楽性の高さを純粋に認めようとしない業界人達の強要によって生まれたこの曲は、やはりどこか輝きを見失った感が否めないと思うのであります。 あまりな酷評かもしれませんが、この曲にはそんな影もある気がします。もうちょっと前向きにこの曲を聴いてみようとすると、次なる『エリー』への踏み台・・・なんてイメージが先行してきます。踏み台と言うよりも踏み絵に近いんじゃないかな・・・とも思ってしまう・・どちらにしても残酷です。 優秀すぎる兄(シンドバッド)を持ち、劣等感を持ってしまった弟――。挙句の果てには母親から「あなたは望まれて産まれた子じゃないの」と告げられてしまう。絶望し、すべてはこの外見が悪いんだと、ちょっとした整形をする――。それが後に2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』に収録されるバージョン。 サザンのシングルにしては非常に珍しい録り直しが行われていますが、このアルバムバージョンがあったおかげでこの曲も救われている気がします。多少のアレンジの変化が、この曲の鮮度を失わせずに済んでいるのでは――。(とは言え、シングルバージョンのライブ感も今は逆に新鮮) いち早くこの曲の立場に気付き多少なりに手を加えたのであろうサザンの対応力の早さには感動すら覚えてしまいます。もしかしたら、この対応力が、サザンを学生バンドからプロフェッショナルバンドへと変えるきっかけになったのではないでしょうか。だとしたら、この曲の功績は大きいのです。 アヒルの子だって実は白鳥だったではないか。ひょっとしたら、この曲はすごい可能性を秘めているのではないか?明るい未来を願わずにはいられません。。(笑) 『気分しだいで責めないで』は、今も昔も存在するこんな身勝手なファンへのサザンなりのメッセージソングなのでは・・・なんて。
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