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4日目『いとしのエリー』/サザン 3rd Sg
⭐️収録曲:
1.いとしのエリー
2.アブダ・カ・ダブラ(TYPE3)
⭐️発売日:1979年3月25日
⭐️最高位:2位
⭐️売上枚数:72万枚
「エリーは私にとって日本のランドマーク的存在だ」
――これは、今は亡き巨匠レイ・チャールズの言葉です。あまりにも有名な日本のスタンダード。おそらく、「世代を超えて愛される日本のスタンダードは?」とアンケートを取った時、"世界で一番有名な日本の歌"『上を向いて歩こう』と並ぶ票を集めてしまうのではないでしょうか?
世界的認知度はそれほどないのに、この現象が起こり得るのはどういうことでしょう?つまり『いとしのエリー』は、もはや日本人のDNAレベルにまで浸透してしまった曲と言えるのかもしれません。
私は、常々この曲が、ビートルズの『イエスタデイ』と重なって見えてしょうがありません。1960年代――突如、イギリスで発生したビートルズ現象。若者は熱狂するのですが、大人たちはどこか呆れ顔で「雑音にすぎない」と酷評します。
そこにポールがギター1本で歌う『イエスタデイ』――優しく切ないメロディーに絶妙にフィットする感傷的な詞。またたく間に、ビートルズは頂点へとのし上がっていきました。“若者の音楽”から“大人も浸ってしまう音楽”に転換されてしまうと、やがてそれは、国民的ヒットと呼ばれるものとなります。
これは、サザンにも共通している点であり、『勝手にシンドバッド』で期待されたハイテンションな"面白ロック"のサザンのイメージをガラッと覆す正統派バラードは、若者のみならず多くの世代に支持されます。まさしく『いとしのエリー』は『イエスタデイ』そのものと言えます。
ビートルズや『イエスタデイ』が登場した時、日本の若者は洋楽コンプレックスなるモノを強烈に味わった事でしょうが、そのおよそ15年後――そんな洋楽コンプレックスの呪縛を初めて取り払ったのはサザンであり、この“エリー”ではないでしょうか?
『いとしのエリー』を取り上げるとどうしてもワイドな話になってしまいますが、この曲を特別な想いで、日々の生活の中、聴いている人は、日本中に数えきれないほどいるのは確かです。だから、偉大なバラードと言っても、遠い存在でも無く、身近な親しみやすさも同居している稀有なバラードなのです。
また、リリースから数年後には、『ふぞろいの林檎たち』の主題歌として話題になり再び脚光を浴び、またその数年先には先述したレイチャールズのカバーによる逆輸入のヒット。そして、国内でも、平原綾香さんや、広瀬香美さん、平井堅さん、EXILEのATSUSHIさん、ほかたくさんのミュージシャンがカバーリリースをして歌い継いでいます。まだまだこの先も、新しい話題を生んでいく事は間違い無いでしょう。
ここで、そんな曲の起源的なエピソード話を。
“エリー”のモデルは誰?という議論でありますが、“原坊”という説を唱える人が圧倒的に多かったのは原さん執筆エッセイの『娘心にブルースを』の影響です。また、当事のインタビューから、実姉・(故)“エリ子さん”だという説も・・・。
この議論に終止符を打ったのが、ほかならぬ桑田さんであり、ご本人のラジオ番組の発言でありまして、単なる〈エリー〉という音の響きから名付けたのであるとのことでした。エリ子さんが亡くなられた直後の番組で語られていました。
ファンとしては、原坊説やお姉さん説のようなドラマチックなエピソードも期待したいものです・・・。もしかしたら、桑田さんの照れ隠しもあるかもしれないですが。
そんな原坊が、この曲の間奏で、ちょっとした控え目な笑い声(ウフフという)をムードたっぷりに聴かせていますが、実は毛ガニ先生が、インベーダーの真似までしてスタジオの原坊を笑わせてできたシロモノだった、という台無し(笑)のエピソードも残っています。そんなところがいかにもサザンらしい。
これからも、この曲が、一番身近にいてくれる究極のバラードであり続け、悲喜こもごもの(?)エピソードを、私達に与え続けていくならば、ひょっとしたら、この先、『イエスタデイ』と並ぶ世界的なDNAバラードとなっているのでは?と期待してしまいます。
2019年世界中でヒットした映画『イエスタデイ』では、主人公の青年以外ビートルズを知らない世界で『イエスタデイ』を初めて仲間の前で披露して騒然となるシーンもありますが、日本版でリメイクするならば、それはサザンであり『いとしのエリー』が担うことになるでしょう。
映画のタイトルはもちろん、、、言わずもがなです。
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