7日目『C調言葉に御用心』/サザン 5th Sg

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7日目『C調言葉に御用心』/サザン 5th Sg

⭐️収録曲:  1.C調言葉に御用心  2.I AM A PANTY(Yes , I am) ⭐️発売日:1979年10月25日 ⭐️最高位:2位 ⭐️売上枚数:37万枚 デビューからわずか1年と4ヶ月・・・。サザンオールスターズは、そんなわずかな期間のうちに後世に残るであろう名曲を3つも生み出してしまいました。ひとつは、『勝手にシンドバッド』というデビュー曲。次いで『いとしのエリー』という絶対的バラード。そして3つめが『C調言葉に御用心』です。 もちろん3つなんてケチなことは言わずに『思い過ごしも恋のうち』や『お願いD.J』、『ラチエン通りのシスター』、はたまた『女呼んでブギ』なんてありますが、それまでのどの曲よりも一皮も二皮もむけた感があるのが、何とも大人の余裕たっぷりの“C調言葉”です。 “余裕たっぷり”と付け加えたのですが、実際のところ、この曲が誕生する過程では、相当な産みの苦しみがあったようです。それは、初めてサザン――桑田さんが、ぶち当たった大きな壁でした。 前作『思い過ごしも恋のうち』は、以前からシングル候補にあがるほど出来が良く、アルバム『10ナンバーズ・からっと』からリカットされた経過がありましたが、その反面、これからも、シングルとして出せる、大衆に受け入れられる曲を作れるのか?というプレッシャーが桑田さんを悩ませていたそうです。 それもそのはず、これまでのシングル4曲がどれも一級品と呼べるものであり、並みのロックバンド(ましてや70年代後半の)が、経験することの出来ないような理想的な“流れ”と言うものも自然と生まれていたから、その“流れ”を壊さずに乗っていかなければという重圧もあった事でしょう。 とにかく苦しみに苦しみ抜いて生まれたのが、この“C調言葉”なのです。だから、桑田さんにとっても思い入れの強い曲らしく、度々、この曲について評価するケースが多いと見受けられます。 曲調も、『勝手にシンドバッド』のハイテンポと『いとしのエリー』のしっとりバラードの中間に位置するミディアム路線となりますが、今後、サザンには、こうしたミディアムナンバーの名曲が次々と生まれ、サザンの魅力のひとつとなっていくのですから、まさに転機の曲であると言えます。 ハイテンポからスローバラード、そして、ミディアムチューンに至るまで、現代ほど楽曲のジャンルのレンジが広くなかった70年代~80年代初頭で、これだけバラエティのある曲を生み出していくということはもはや常識外れなのです。 そもそも“シンドバッド”から“エリー”という流れ自体、当時の若者の耳には驚嘆を持って受け止められます。それが、いつの間にか“C調言葉”のようなカジュアルな曲まで出来上がるなんて、なんて刺激的でしょう。 おそらく、現代のミュージシャンの多様化を切り開いたのはサザンオールスターズとも言えるのです。 ミュージシャン一組には、固定したイメージがあり、固定されたタイプの曲しか持ち合わせないという常識を、いとも容易く覆した怪物バンド・サザン――そして、天才ソングライター桑田佳祐。 世界を見回しても、一人でこれほどまでの振り幅をもったヒットメーカーは現代においても稀有な存在です。“シンドバッド”“エリー”の落差から“C調言葉”で、若者の耳にはすっかり“サザン実力派”というイメージが定着していくのです。 「胸をつかみ うなじを味わい・・・」のドキッとする歌詞だって、サザンだから受け入れられます。桑田さんの音楽性の振り幅と説得力に裏付けされた上で成立する表現でもあります。 桑田さんの類まれな個性であるちょっとエッチなライブパフォーマンスを安心して受け入れられるのも、驚異の振り幅にも崩れない絶妙に安定したバランスの音楽性があるからなのです。だって、どこのバンドがコンサート中におパンツを見せますか?(最近はさすがに無いけど・・・)桑田さんだと、やはり受け入れられるのです。 パンツと言えば、このシングルのB面の『I AM A PANTY』も衝撃的な曲です。(公式にも歌詞の文章化ならず・・・) そんなセクシャルさもサザンが勇気を持って進んだ道なのです。その後、ぞろぞろと、赤信号をみんなで尾いてくるのですが、どのミュージシャンも横断歩道を渡るまでにはいきません。改めて、このシングルは、サザンの偉大さを証明する1枚なのです。
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