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「ふたりの気持ちに答えられないよ。……ごめんね」
放課後、家の近くの公園で幼なじみの今川タクヤと北条ヒロシに告白された武田マユミ。
子供の頃からいつも遊んでいた仲良し三人組だったはずなのに、いつしかタクヤとヒロシはお互いマユミに恋心を抱くようになった。
しかし彼女の答えはどちらか一方を選ぶことはなく、ここで男ふたりの片思いは終わりを告げたのだった……。
「なぜだ!?」
「どうして?」
マユミの言葉にショックを受けたふたりは、素直に彼女の気持ちに応じることができず、悲痛な面持ちで問いかけてくる。
「――だって、小さいころからずっと一緒だったから……タクヤくんもヒロシくんも家族っていうか、兄弟にしか思えないの……」
親族的な情はあっても、異性としての感情はもてないとマユミはいう。
タクヤはぐっと歯を食いしばり、ヒロシはやや涙目になる。
ふたりは幼なじみの枠を越えてマユミと付き合いたかった。
それだけ彼女のことを思い続けていたのだ。
落ち込むタクヤとヒロシは顔をマユミから反らし、彼女にフラれた事実を無理やりにでも身体の奥底へ飲みこんでしまおうとくちびるを噛みしめる。
マユミは気持ちが沈みかけている彼らを思うと心が痛み、幼なじみとして励まそうといつもの笑顔を作ってみせた。
「そんな顔しないでふたりとも!わたしはいつまでもタクヤくんとヒロシくんの大の仲良しのままでいるから!!――だから元気出して、ね?」
そういって笑いかけてはいるが、マユミもまた複雑な感情を隠しきれずにいる。
だけどふたりの大切な幼なじみのためならと、マユミは勇気を振り絞って彼らの肩を優しく抱いた。
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