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すこし肌寒い一陣の風が吹き抜け、マユミのスカートがめくれ上がった。
だが男たちは互い真剣な眼差しで見つめ合い、マユミの下着に興味を示さない。
どこからか18時を知らせる『蛍の光』のメロディーが流れだしたと同時に、両者が一斉に殴り合いのケンカをはじめた。
学園では空手部のタクヤ。
キレのあるパンチが炸裂する。
対して園芸部のヒロシは、タクヤがくりだす拳をよけることだけで精一杯だ。
運動部と文化部、そして体格や力の差があってもヒロシは決して勝負を捨てない。
「ちょっと待って、ふたりとも!どうしていきなりケンカなんて始めるのよ!?」
この展開についていけないマユミは、ふたりのケンカ(?)をやめさせようと近づいてきた。
しかしタクヤとヒロシはお互いの両手をガッチリとつかみ合いながらもマユミ立つ方向へ顔を向けて大声で叫ぶのだ。
「女はすっこんでろ!これは男と男の戦いだッ!!」
「そう、だよ……。ボクらの雌雄を決する……大切なことなんだ!」
「タクヤくん、ヒロシくん――」
熱く燃え上がる男ふたりの理解不可能な信念に、マユミは目がテンになって言葉を失う。
しかし彼女はノー天気な性格なので、都合のいい解釈をしはじめた。
(これは女のわたしでは止められない、男同士のプライドの戦いなのね。たぶん……)
妄想力の賜物なのか何も考えてない阿呆なのか、マユミの胸はトクンと無駄に熱くなる。
「ふたりとも、男の子なんだね」
マユミが優しい笑顔でふたりにほほ笑みかけると、男たちは『はあ?』と顔を歪ませたのだ。
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