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無性に食べたくなってしまった。
本来、できたて熱々のラーメンを食べるのであれば、そこら辺のラーメン屋にでも、いけばいい。
種類豊富なラーメンが出迎えてくれるのであるのだけれども、焼きそばの部類となれば、どこへ行ったらいいのか疑問である。
定食屋やレストランであるならば、可能性はゼロではない。
だが、時刻は日付が変わった午前02:00。定食屋であればまず閉まっているし、レストランへ行くとするならば、ちょっと遠出をしなければならない。
ならば、選択肢は一つ。コンビニのインスタントしかないのである。
焼きそばと言えば浴衣を着た男女二人のCMが一番に思いつくであろう。
焼きそばもそうだが、インスタントラーメンの類いは、もう何年も食べてない。
何年も食べていないのであるが、この味だけは、覚えている。
鼻をツンと刺激するソースと純白な麺が複雑に絡みあった、食欲を刺激するあのハーモニーは忘れる事ができない。
最近では、コンビニで買ったその場でお湯を注いで調理して食べる事ができる、という事で我が人生初の挑戦だ。
早速コンビニで購入。 その場で調理して食べるので袋に入れて貰わなくてもよいのだけれども、店員さんは親切丁寧に割り箸も一緒に袋に入れてくださった。
コンビニの調理コーナーに、常備してある、お湯の入っているポッドを確認。袋に入れてくださった焼きそばを、慌てる事なく、取り出す。
白いパッケージを包む透明なビニールを剥ぎ取ると、陶器のように白い蓋のついたプラスチック容器と対面する。
四角い容器は何年経っても変わっていない事に安堵。
蓋を取ると、複雑に絡み合った白くてカチカチの麺の上にキャベツを乾燥させた小袋と焼きそばをさらに進化させるコショウの入った小袋、そして、焼きそばの代名詞、液体のソースの小袋が入っている。それら、3つの小袋を取り出し、容器に湯を入れようと蓋を開けたのまでは良かった。
コンビニで調理ができると知っていたのだけれど、ポッドの使い方が
ワカラナイ。
容器の蓋を開け白い麺が入っている容器に向けお湯を注ごうにも、ボタンを押してもお湯が出ないというトラブル。
お湯が、たっぷり入っているのは確認できたし、まさかの、長押しなのか? と試してみたがそれも違う。
まさか、ポッドを持ち上げて、湯を注ぐなんてありえないし、店員さんを呼ぶべきなのか、一瞬悩んだのだが、ロック機能のボタンがあるのに、今更ながら、気づく。
最近の流行り、時代の波に乗り遅れた瞬間を感じてしまった。
ロックを解除してからのリトライ。
ポッドから熱湯が出ると白い湯気をたてながら、容器に湯が注がれる。
だいたい、麺が少し沈む程度にお湯を注ぐのがポイントだろう。蓋をして、数分を待つ。
懐かしい焼きそばの味を想像しながらの数分。
私はカヤクと呼ばれるキャベツは入れない派なのでカヤクは、そのままゴミ箱へ。
もちろん、スパイスとなるコショウも入れない。ソースオンリー派である。
待つこと数分。
長くて短い数分。まるで、デートの待ち合わせの時間。 相手を待っているかのような期待。
予約していたラノベの新刊を待ちわびるかのような期待。
デートの相手が遅れてくるのは、日常茶飯事であるだろうし、新刊の内容が期待外れであることはよくあるはずではあるが、カップ焼きそばは絶対に裏切らない。
我が青春のカップ焼きそば。
思案にくれる数分。大体の時間が経過したのであろう。いざ湯切りタイム。
熱々の容器を両手で持ち、傾ける。
最高のカップ焼きそばを作るコツは水気を残さない事にある。 と私は信じている。
湯切り口から、大量の湯が白煙りを吐き出しながら排出。
大体の湯が排出されたころあいを見計らって容器を振るのだ。傾けていたのを垂直にして激しく上下に、そうすることによって、余分な水分も排出され麺もしっかりほぐれるのである。
至高のカップ焼きそばを作るための情熱と、願いを込める。
―ッドシャァッ!―
一瞬の出来事である。
容器から全ての麺がこぼれ落ちてしまった。
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