再会

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再会

――― 翌日、蘭は早速市を連れて宇佐山城へやってきた。蝶子の部屋を開けると見知った顔があって思わず立ち止まる。 「あ、あれ?ねねちゃん、どうしてここに?」 「蘭丸さんに市様。ご無沙汰しております。実は信長様にここの近くに城を建てて頂いて、数ヶ月前からそこに住んでいるのです。旦那様は時々しかいらっしゃらないので実質私が城主みたいなものですが。」 そう言って微笑む姿は、蘭が知っているまだ幼かったねねとはイメージがだいぶ違って見えた。秀吉の妻として、そして城主代行として多くの使用人を抱える立場がそうさせたのだろう。蘭は戸惑いながら蝶子に言った。 「時々会ってるのか?」 「うん。こっちから遊びに行く事もあるし、結構頻繁に会ってるよ。信長の奴、私達がこうして会えるようにお膳立てしたみたい。口には出さないけどね。」 そう言って蝶子は悪戯っ子のような顔で笑った。 「取り敢えず座れば?市さんも早く部屋に……ってあれ?その子は……」 まだ部屋に入ってこない市に声をかけると、七、八歳くらいの女の子が市の足にしがみつきながら遠慮がちにこちらを覗き込んでいた。市はちらりとその子を見ると屈みこんだ。 .
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