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比叡山焼き討ち
―――
山が、燃えていた。
それはまるで夜空に真っ赤な花が咲いたみたいに綺麗で、人々は山の上でどんな凄惨な事が起こっているかなど気づかずに、ただ茫然とその光景を見ていた。
しばらくそうしていたが一人の男がハッと顔を上げた。
「延暦寺は……延暦寺のご本尊様は無事なのか!」
「そ、そうだ!それに覚恕様は……」
「私の夫が僧兵として坊舎にいるのです!誰か助けて下さい!!」
「無理だ!あの状態では近づく事すら出来ない!」
「そんな……」
慌てて家から出てきた女性がその場に崩れ落ちる。周りの人達は気の毒そうな顔をしながらも、いまだに勢いよく燃えている山の方へ視線を投げた。
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