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蘭と秀吉が延暦寺に着くと、ちょっとした騒ぎになっていた。
「どうしたんですか?」
「あぁ、蘭丸君。先程延暦寺の座主の覚恕かくじょを捕らえたのですが、浅井と朝倉の軍は昨日ここを出てそれぞれの国に帰ったと言っていて……」
「えぇっ!?籠城していたはずじゃ……」
「それが延暦寺側も突然の事で、止める間もなく行ってしまったと。どうやら私達が来るという情報が洩れていたようです。」
「そんな……」
蘭が茫然としていると秀吉がさっと間に入ってきた。
「行ってしまったものは仕方がない。我々がすべき事は予定通りこの山にいる者全てを処刑し、跡形もなく焼きつくす事だ。」
「……わかっています。ただ情報が洩れた事は事実ですから、戻ったら早速信長様に報告して対処しないといけません。」
「それこそわかりきっている事だ。」
「ちょっ……ちょっとお二人共、落ち着いて……」
険悪な二人のムードに居たたまれなくなった蘭が止めに入る。その時光秀の従者が寺の方から走ってきた。
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