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―――
「光秀様!寺の中にいた者は全員捕縛しました。後は少し下った所にある坊舎に僧兵がいるようですが、そちらも時間の問題だと思います。」
「わかった。あそこだな。」
光秀が視線をやった方を見た蘭は、思わず目を見開いた。
何十人もの僧達が手を後ろで縛られて項垂れている。その中で一人だけ挑戦的な目をして辺りを見回している者がいた。恐らく座主の覚恕だろう。蘭はその目と一瞬目が合った気がしたのだ。
縛られてもうすぐで殺されるという状況にも関わらず、生きる事を諦めていないかのような眼差しに背筋が凍る。
「あ、火だ……」
下の方が明るくなったと同時に微かにパチパチという音がした。別働隊が坊舎に火を放ったのだろう。それを確認した光秀は大声で叫んだ。
「火を放て!」
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